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ちらちらと瞼の裏で日の光が赤い色に見えるのが楽しくて日差しの暑さも心地良かった。閉じたままでいると不意に間近に
心地良い気配を感じ、目を開いた。
「アッシュ」
「……生きてるな」
「生きてるよ」
手を伸ばすと、すかさず握り返される。直ぐ傍らに座った半身の膝に胴体ごと乗り上げしがみつくと、おろおろと手が空中を彷徨い、やがて背中をぎこちなく撫でられる。手はあいも変わらずに繋がれたままで。
「心配しなくても大丈夫なのに」
「うるさい」
ルークは一度死んで、蘇った。ゆえに心配性の半身はルークを片時も離したがらない。煩わしいものを全て捨てて二人だけ
の生活を続ける今は、そこまで長く離れる事も無くなり何時でも互いを見ていられる時間を共有できる。それがとても嬉しくて、幸せだった。
タタル渓谷の奥、小さな山小屋がいまの二人の暮らす場所だ。髪を撫で始めた男の手に含み笑いの声をもらしルークは身じろぎする。
「大人しくしていろ」
「くすぐったいもん」
背中に流れる朱金の髪を撫でるのがアッシュはお気に入りだ。それゆえにルークはほぼ毎日髪を撫でられていて、すこしだけ煩わしい気持ちになる、もちろん無条件で嬉しいのだが……そんな事を言えばアッシュが調子に乗る事が解るので心の中でしか言わない。
「もう、部屋に戻れ。日差しがきつい」
「ん、わかった」
立ち上がる時に手を貸してくれるアッシュに礼を伝えながら二人は室内へと戻っていく。
これからも代わり映えのないとても幸せな日々を送りながら。
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