ジェイドから受け取るものを受け取り、アッシュたちと使用している宿へ入ろうとした瞬間、目の前で扉が勢いよく開かれた。
「うわ! 」
「すまん! ってレプリカ! 」
「オリジナル? 」
突然の事に持っていた紙袋を落としてしまい、慌てて拾おうとしたが一拍遅く、茶色い紙袋は被験者の手に渡ってしまう。
扉から飛び出すように出てきたのは被験者だった。
「これは? 」
「えっと、お……菓子」
「菓子? 珍しいな」
レプリカは出されたものが好みで無い限りはわがままを特に言わずに何でも食べる。アッシュが渡すものなら好みに合わなくても口にする。そんなレプリカが自分で購入したいう事に驚いた。
充分な小遣いを渡しても使わずに持っている。そんな印象を持っていたからなおさらだ。
拾い上げて掌に乗せてやると、いつもの通りの無垢な笑みが返ってくる。
「もう出る? 」
「いや、お前を探しにいこうとしたんだ」
其の言葉に申し訳なくなりながら、宿の中に戻る。良く似た容姿の二人が並ぶと自然と視線が集まるが、仲のいい兄弟に見えたのか直ぐにそらされる。
「お部屋行こ」
ツンとレプリカの指がアッシュの法衣を摘まんでひっぱる。その甘えた仕草に服をひっぱるなと言えばいいのかどうか一瞬迷う。
結局迷い気持ちが強く何もいえないまま、借りた部屋に戻る事になった。
「ギンジさんにお茶の淹れ方習ったから! 俺が用意する! オリジナルは座ってて! 」
強引にアッシュを座らせ、茶器の用意を始める。気付かれないようにジェイドの薬を忍ばせて。
(瘴気の中和……俺がやる)
其の固い決意を。
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風が強い。集まったレプリカ達の視線が集まる。人間ならばここで神にでも祈るのだろう、しかし、彼らには神はいない。祈りの対象は存在しない。
祈る事も知らないものもいる。
それでも……。
「お前達と同じもの、ローレライにでも祈るのだな! 」
天を仰ぐもの、睨むもの。祈るもの。
その中心に在る被験者の叫びと共に瘴気の中和が始まった。
半身を置き去りにして。