室内に入ったアッシュは中を見渡して顔ぶれが揃っているのを確認した。
そのままレンを空いている席に置けばその隣に先に中に入れて置いたリンが寄ってきて座る——席を移ってきたようだ。
アッシュは席についている彼らの顔が見える席で腕を組み、顔を見渡し、一言、低く重い声で言い放った。
「何故、呼ばれたか。わかっているな」
「はい。わかりません」
青い髪に首にマフラーを巻いた男性が直ぐに手を挙げた。
予想はしていたがこうも見事に予想通りというのは……。
眉間のシワを増やしたアッシュにその男性は少し怖がっているようだ。怖がるなら考えろ。
「……カイト。あんたね~。今度は何を壊したの?」
男性の隣に座る茶色の髪に赤い服を着た女性がその男性——カイトの首に巻かれたマフラーで首を締め始めた。
「なになに。……カイトなの?」
呼ばれた原因は~。いいメーワクだよ等と席を立ち騒ぎ出す彼らの前に、アッシュは無言でどこからとも無く大量の紙の束を叩きつける。紙とは思えない音と振動で室内は静かになる。
「これが何か分かる人」
さらに低くなった声と険しい顔のアッシュに問われた人たちは顔を見合わせている。返事を期待していなかったアッシュは続ける。
「これは……全て、お前達に対する苦情だ!!」
互いに顔を見合わせた後、騒いでいた人たちは無言のまま席に着いていく。反省している様子は一切無い。
ただアッシュの無言の怒りを感じ取って静かにしとこうと考えたのだろう。
「でも師団長。わたしには心当たりは無いのですが?」
この騒ぎに参加せず座っていた桜色の長い髪の女性は首を傾げている。そのまま隣の紫色の長い髪の男性を問うように見る。
問われた紫色の髪の男性は桜色の髪を撫でる手を止める。
「……いや、特に無いな」
「それを言うならわたしたちだって無いよ~」
「そうそう。こーんな優秀な部下いませんよ」
紫色の髪の男性の言葉に勢いを取り戻した連中が騒ぎ出す。
アッシュは机に拳を叩きつけ口を開く。
「お前らが優秀なのはいい。……ならばコレは一体なんだ」
机上の苦情の山を指させば器用に視線を逸らす連中にアッシュが読んでみろと差し出しても、誰も受け取ろうともしない。
眉間のシワを増やし険しさの増した顔と声でアッシュは連中の顔を見据えた。
「ルカ。心当たりは無いと言うが本当に無いな?」
「ルカは何もしていない」
桜色の髪の女性——ルカに対する問いに答えたのは何故か紫色の髪の男性だった。
「……がくぽが無いというから無いです」
ルカは紫色の髪の男性——がくぽを見てからアッシュに顔を向け答える。
「はーい。リンもレンもないです!!」
「あっ俺もないです!!」
「ミクもー」
「グミもー」
アッシュが何かを言う前に残りの連中が口々に答える。
ミク——緑色の長い髪をツインテールに結った少女や、萌黄色の髪の少女——グミや、双子に、カイトまではまだ抑えられたアッシュだったが、茶髪の女性——メイコまでもが無いと言った瞬間に部屋中に響くかのような声をだした。
「もういい……説明してやるから、全員とっとと席につけ!!」
まだ続きます。