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英雄…アッシュ・フォン・ファブレが帰還して一年半の月日が流れた。
アッシュは一人…タタル渓谷のセレニアの花畑に佇んでいた。
この一年半の時間はアッシュにとって苦痛でしかなかった。
「レプリカ…誰もお前が居た事を覚えちゃいねぇんだ。俺はお前が居たと言ったら医者を呼ばれた…」
この世界に…確かに居た七年という短い生を必死に生きた…己のレプリカ。
彼の部屋だったあの鳥籠は、何も無い空き室で。
彼が好きだった木登りの為に植えられた裏庭の木は今も育ち、枝葉を伸ばしているのに…ルークの為に木を植えたペールはその木を覚えていなかった。
母が作ったアルバムは何も挟まれておらず、母はそれを処分しようした為に、アッシュはそれを譲り受けた。
自分は師によりダアトに誘拐されていた為にアクゼリュスは師の手により崩落した事になっていて。
ダアトから脱走した自分が師を討ち…二年後に生還したと…『教えられた』
「いくら…俺は途中で殺されたと言っても…変な顔をされる…俺しか…お前を覚えていない…」
苦しいと…辛いと…思う。
どうして…世界中のすべての人々からあの幼子の記憶が無いのか…。
知りたくて、様々な文献や書籍に目を通し…誤認していた大爆発の真実を…知った。
「…ルーク…」
死ぬのは…身代わりになるのはいつも、朱金の髪の子供。居場所を奪ったと罵声を浴びせ続けたのに、ルークはいつも…アッシュを気にかけて。
歩み寄る事を止めなかった。被験者が帰還すれば…不必要とされる事を怯え、怖がってさえいた自分に…。
ルークはいつも、体当たりでもするかのように…。
大爆発…コンタミネーション現象が起こり、完全同位体のレプリカと被験者の間で必ず起こる…被験者の死にレプリカの体を使用する事で…被験者のみ復活する…現象。
シュリダンにいた…完全同位体の実験に使用されていたスターという名のチーグルをチーグルの森に連れていき…ソーサラーリングを使用し、聞いた。
被験者なのかと… 。
結局…望まない結果が浮き彫りになるだけだった…。被験者のみ生き残る。
ディストやジェイドに聞いても…結果は変わらず…。
ルークは消えた。乖離しかけのレプリカでも…被験者が先に命を落としていても…大爆発は起こり、レプリカは被験者に食われる。
そして…誰からも忘れられて…。何故なのかわからない…。スターのレプリカは記憶に残り、アッシュ…ルーク・フォン・ファブレのレプリカは世界中が忘れた。彼を愛した少女も…彼を育てた青年も…生み出す技術を造った軍人も…彼に支えられた罪を犯した少女も…大切な幼なじみと言った少女も…いつまで側で彼の精神を支えた聖獣も。
命懸けで世界を守り…明るく笑い…泣く姿を誰にも見せなかった…半身はいくつかの痕跡を残して、もう…何処にもいない。
「今日は俺が帰還した日…第七音素が、このタタル渓谷で活性化する」
腰に帯びたローレライの剣を抜く。じわりと掌が熱くなるのは錯覚か…なんなのか。
「俺は認めない。ルーク…この名はくれてやる。てめぇが罪人なら俺もなってやろうじゃないか?ローレライの力を使う譜術がタイムストップならそれ以外にもあるはずだ…」
半年の間に、身近な人々にルークを聞いた。
絶望すらした。
残りの一年はルークの安否を確認しつつ絶望しかない今を捨て…過去に戻る方法を探し続けてきた。
何故こうも自分がレプリカに執着するのかわからない。
だが先日…ユリアシティの朽ちかけた蔵書の中に見つけたのだ…知るだけでも禁忌とされる『時渡りの秘術』を…。
具体的な代償すら明記されていない読み解く事すら困難な蔵書。だが…創成歴の人間は過ちを犯した…知るだけでも禁忌なら形に残さなければいいのだ。
形に残すから…過去に戻りたい人間が使用する。
スペルを唱え、空中に剣先で譜を刻む。
発動前に秘術を止め…アッシュは朗々と別の譜を…ユリアの大譜歌を歌い上げる。
成功例が無いとされているなら成功するだけの触媒を作ればいい。
自分の譜術士としての能力は決して高くない。二つ同時ともなれば普通の人間には不可能だ。
だが…望みの為なら、不可能すら可能にするまで…。
歌い…秘術と同時に発動させる。体がばらばらになりそうな浮遊感。
『…、…』
『。…!』
聞こえるのは…知った声。
頭に直接響く声。
『過ちを犯したのかアッシュ…』
戸惑うような…悲しむような…ローレライの声。
ローレライ…か?
『いかにも我だ…アッシュ…過ちを犯し…過去に帰るのか?二度と…戻れぬ。今すぐに戻してやろう』
ふざけんな…このままでいい。
『しかし…代償がある。大爆発を起こしたその身はレプリカに近い。時の流れに耐えられず乖離しかねない』
それがなんだ。第一、そんな程度が代償か?笑わせるな。
『代償は別にある。時に逆らうは深き業。他の世界の理はこの世界の理とは違う。二度と…魂が輪廻の輪に帰ることが出来なくなるぞ』
アッシュは一人…タタル渓谷のセレニアの花畑に佇んでいた。
この一年半の時間はアッシュにとって苦痛でしかなかった。
「レプリカ…誰もお前が居た事を覚えちゃいねぇんだ。俺はお前が居たと言ったら医者を呼ばれた…」
この世界に…確かに居た七年という短い生を必死に生きた…己のレプリカ。
彼の部屋だったあの鳥籠は、何も無い空き室で。
彼が好きだった木登りの為に植えられた裏庭の木は今も育ち、枝葉を伸ばしているのに…ルークの為に木を植えたペールはその木を覚えていなかった。
母が作ったアルバムは何も挟まれておらず、母はそれを処分しようした為に、アッシュはそれを譲り受けた。
自分は師によりダアトに誘拐されていた為にアクゼリュスは師の手により崩落した事になっていて。
ダアトから脱走した自分が師を討ち…二年後に生還したと…『教えられた』
「いくら…俺は途中で殺されたと言っても…変な顔をされる…俺しか…お前を覚えていない…」
苦しいと…辛いと…思う。
どうして…世界中のすべての人々からあの幼子の記憶が無いのか…。
知りたくて、様々な文献や書籍に目を通し…誤認していた大爆発の真実を…知った。
「…ルーク…」
死ぬのは…身代わりになるのはいつも、朱金の髪の子供。居場所を奪ったと罵声を浴びせ続けたのに、ルークはいつも…アッシュを気にかけて。
歩み寄る事を止めなかった。被験者が帰還すれば…不必要とされる事を怯え、怖がってさえいた自分に…。
ルークはいつも、体当たりでもするかのように…。
大爆発…コンタミネーション現象が起こり、完全同位体のレプリカと被験者の間で必ず起こる…被験者の死にレプリカの体を使用する事で…被験者のみ復活する…現象。
シュリダンにいた…完全同位体の実験に使用されていたスターという名のチーグルをチーグルの森に連れていき…ソーサラーリングを使用し、聞いた。
被験者なのかと… 。
結局…望まない結果が浮き彫りになるだけだった…。被験者のみ生き残る。
ディストやジェイドに聞いても…結果は変わらず…。
ルークは消えた。乖離しかけのレプリカでも…被験者が先に命を落としていても…大爆発は起こり、レプリカは被験者に食われる。
そして…誰からも忘れられて…。何故なのかわからない…。スターのレプリカは記憶に残り、アッシュ…ルーク・フォン・ファブレのレプリカは世界中が忘れた。彼を愛した少女も…彼を育てた青年も…生み出す技術を造った軍人も…彼に支えられた罪を犯した少女も…大切な幼なじみと言った少女も…いつまで側で彼の精神を支えた聖獣も。
命懸けで世界を守り…明るく笑い…泣く姿を誰にも見せなかった…半身はいくつかの痕跡を残して、もう…何処にもいない。
「今日は俺が帰還した日…第七音素が、このタタル渓谷で活性化する」
腰に帯びたローレライの剣を抜く。じわりと掌が熱くなるのは錯覚か…なんなのか。
「俺は認めない。ルーク…この名はくれてやる。てめぇが罪人なら俺もなってやろうじゃないか?ローレライの力を使う譜術がタイムストップならそれ以外にもあるはずだ…」
半年の間に、身近な人々にルークを聞いた。
絶望すらした。
残りの一年はルークの安否を確認しつつ絶望しかない今を捨て…過去に戻る方法を探し続けてきた。
何故こうも自分がレプリカに執着するのかわからない。
だが先日…ユリアシティの朽ちかけた蔵書の中に見つけたのだ…知るだけでも禁忌とされる『時渡りの秘術』を…。
具体的な代償すら明記されていない読み解く事すら困難な蔵書。だが…創成歴の人間は過ちを犯した…知るだけでも禁忌なら形に残さなければいいのだ。
形に残すから…過去に戻りたい人間が使用する。
スペルを唱え、空中に剣先で譜を刻む。
発動前に秘術を止め…アッシュは朗々と別の譜を…ユリアの大譜歌を歌い上げる。
成功例が無いとされているなら成功するだけの触媒を作ればいい。
自分の譜術士としての能力は決して高くない。二つ同時ともなれば普通の人間には不可能だ。
だが…望みの為なら、不可能すら可能にするまで…。
歌い…秘術と同時に発動させる。体がばらばらになりそうな浮遊感。
『…、…』
『。…!』
聞こえるのは…知った声。
頭に直接響く声。
『過ちを犯したのかアッシュ…』
戸惑うような…悲しむような…ローレライの声。
ローレライ…か?
『いかにも我だ…アッシュ…過ちを犯し…過去に帰るのか?二度と…戻れぬ。今すぐに戻してやろう』
ふざけんな…このままでいい。
『しかし…代償がある。大爆発を起こしたその身はレプリカに近い。時の流れに耐えられず乖離しかねない』
それがなんだ。第一、そんな程度が代償か?笑わせるな。
『代償は別にある。時に逆らうは深き業。他の世界の理はこの世界の理とは違う。二度と…魂が輪廻の輪に帰ることが出来なくなるぞ』
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