ベットに腰掛けたルカは飲みかけのハーブティに口を付ける。彼女が飽きる事無く見詰め続けるのは、取材で撮った写真だった。
(がくぽ……)
映りこむ筈の無い死んだはずの恋人。
涙が溢れそうになり、慌ててぬぐうと僅かに頭痛を感じた。……ここのところ酷く疲れている。
彼を無くしてから考える時間を忙殺するようにして働いてきた。助手として仕事を手伝ってくれているリンには何度も何度も休む様に言われているというのに、ルカは休もうともせずに働いていた。
そんなルカに痺れを切らしたかのように、仕事の調整役をしているリンは長期の休みを捥ぎ取ってきた。
リンが言うには先方も事情を知っている分かなり融通してくれたそうだ。
そんなわけで、ルカは今回の廃屋の撮影後は休みというわけだ。
(別にいいのに……)
がくぽを思い出すと辛い。だからこそ、休みは必要無いのに。
写真をベット横のテーブルに載せ、写真を片手に横になると自然と瞼が下りてきた。酷使していた身体は最近の睡眠不足もあり休息を求めてた。
目を開けるとそこには雪景色と廃屋があった。否、撮影に来た場所とは似ても似つかぬほど……禍々しい。
寒さは……感じる。手足が悴み吐く息は白い。
寒さから逃れるために、ルカは屋敷へと足を踏み入れた。
屋敷の中に人気は無く、閑散とした雰囲気の中……動く人も居ない。真っ直ぐに続く廊下を進み、曲がり角が視界に入ると、一人の女性が走り去っていった。黄緑色の衣服の緑色の短めの髪をした女性が恐怖に満ちた声音で
何事か叫びながら……。
ルカは慌ててその女性の後を追いかけたが、暫らくすると間取りも分からない屋敷の中で完全に迷ってしまった。
途方にくれているわけにも行かず、ルカは囲炉裏のある部屋の階段を上がり、左右を見回すと……床の上で何か動いた気がした。そこに目をやると動くような物はなく、あったのは古めかしいカメラだけであった。
説明書のような古い手書きの本と一緒に、床の上にあるそのカメラは何故か異質に思え、ルカはそのカメラと本を手に取り、ページをめくり始める。書かれた内容は、めまいがする様な非現実なものであったが、がくぽも写真もあった為……ルカは否定出来なかった。
その時、ルカの耳に女性の悲鳴が届き、慌てて階下へと走りだした。
つづく