甘甘めざしてみた!んですけど、ほんとひどいww
切ない系とかもきちんとかけるようになりたい。
前半ルークの名前が違いますが、後半はルークです。
アッシュ×女ルークです
続き物になってしまったよwww
どうしよう。
そんな思考に瑠璃は深くため息をついた。
今夜、やっと決まった縁談の相手が屋敷に来る。父としてはもっと早くに縁談を決めたかったようだが、瑠璃の持つ見鬼の力を恐れてか中々これといった家柄のものが集まらなかったのだ。
屋敷に殿方が来訪し一夜を共にすれば結婚は成立する。返歌を返したいりとやること自体はあるにはあるが……。
瑠璃は名門家の出の姫で四姉妹の三番目だった。17という年齢でも婚儀が整わないのは見鬼……人ならざるものが見える特殊な目の持ち主で会った事が理由だった。
姉も妹も母親は違う。
乳母も年齢を理由に辞してしまい彼女の相談相手はここ最近は誰もいなかった。女房達は彼女を恐れてもした。
結婚には乗り気になれない。女の幸せは結婚をすること。女の役割は子を生む事。
それくらいは重々承知していても。
(あの夢が悪いんだ)
毎夜毎夜見る夢、物心ついた頃には見ていた夢。
とある男性が、力強く抱きしめくちづける。囁く言葉は熱烈な愛の言葉で……瑠璃の生まれ変わった時に必ず迎えに来るというのものだ。
彼に会うたび、早鐘を打ち破れてしまいそうな心臓も抱きしめられる度に感じる安堵も。
思い出すだけで頬が熱い。
女房に不審に思われないように扇で顔を覆うと、もうすっかり覚えてしまった青年の顔を思い浮かべる。赤い髪に緑の目と言うおおよそ見た事も無い容姿の長身の青年。低い美声も、長い手足も。
思い出すだけで胸が痛い。締め付けられる感覚が苦しい。
あの容姿を恐れることが出来ない。強く惹かれはしても、日ノ国に居ない容姿だと畏怖を抱く事が出来ない。
(あの人は……妖なんだろうな)
彼の名前は解る。
夢の中で何度も繰り返し呼んだ。
(そう言えば……)
夢の中では自分は男だった。なんで気付かなかったんだろう。
もし、男性の自分を探しているなら……彼は見当違いのところを探しているに違いない。衆道に嫌悪が無いのもあの夢の力だとしても。
そっと立ち上がると瑠璃は御簾の近くまで歩を進める。重い着物を捌きながら御簾越しに庭を眺める。
秋の頃。
段々と冷え、茜色を過ぎれば白の冬を迎える。
もう直ぐ、火鉢が入用になる。使用人たちは薪の用意や冬用の着物に香を焚き染めはじめる。
姫様?そう呼びかけられても瑠璃は振り返らなかった。その名前にはずっと違和感が付きまとい馴染めない。夢の中で青年が呼ぶ名前が自分の名前だ。そう……確か……。
(ルークだ……)
平仮名では無い。恐らく男性文字の仮名で表すのだろう。瑠璃はゆっくりと御簾の側に腰をおろすと女房の一人が敷物を持ってやってきた。礼を言って受け取りそれに腰をおろす。瑠璃が嫌煙された理由は瑠璃自身が聡明だったという理由もある。
女は平仮名さえ嗜んでいればいい。後は、女人としての教養だけで十分という世相に、彼女は外れていた。長い黒髪はうつくしいが、瑠璃は美女の基準を満たしていない。身体は細く、ふくよかさがない。顔立ちもとてもではないが当てはまる箇所が無い。
今回の縁談も彼女の家柄がなせるものだった。
まあ、惚れたはれたで婚姻を結ぶもののほうが希少だ。
その夜、瑠璃の待つ部屋に夫となる男がやってきた。中将の位の男は瑠璃は見るなり顔を顰めた。うわさに違わないその容姿に落胆した様子だった。
解っていた事だが、瑠璃もその様子を見て苦笑する。心はもう決まっていた。
男から距離を取りながら彼に聞こえる事を祈りつつ……。
「アッシュ、ここに居るから迎えに来て」
何も起こらなかった筈なのに、室内を照らしていた明かりが消える。今夜の事を考えて油を新しくしてあったはずの明かりが。男の困惑した声も消えた明かりも瑠璃は意識できなかった。
「こんなところに居やがったか、ルーク」
抱きすくめられ、間近にある妖の青年の顔から視線が外せない。
強引に唇を重ねられ、呼気を奪われる。目が慣れてきた男が彼を見て悲鳴をあげ、ちらりとそちらを彼が見た瞬間……屋敷の屋根の上に移動していた。
驚いて左右を見回すルークにアッシュは苦笑を浮かべる。
「驚いているところ悪いが、俺の城に移る。目を回すなよ」
「え?!」
言葉と同時にやってきたぐらりとしためまいに似た感覚にルークは目を白黒させる。カツンと男の履いた履物が硬い石造りの床を叩く音にようよう目を開けた。
そこは、見慣れない造りの屋敷だった。(見慣れない事は無い、かつて一緒に住んでいた)
「あ、ここ……」
なつかしい。思わず涙ぐんでしまうルークにアッシュは優しい所作で彼女を助け起こす。さらりと流れた朱金の髪にルークは驚いて映すものを探す。
「驚いたか?黒も良かったが、その色気に入ってたんだ」
勝手に元に戻させてもらったと事も無げに言うアッシュにルークは納得する。好きだとよく褒めれくれた髪と眼の色に戻したのだろう。
「遅くなったな、すまない」
朱金の髪を撫ぜながら、アッシュが呟く。その謝罪に首を振る事で気にしていないことを伝えると、抱きしめてきてくれる彼の背中に腕を回した。前と違い、腕が周りきらない。
「ルーク、会いたかった。ようやく会えた……。今度こそ、ずっと一緒に居よう」
甘く囁く声に頷き返すルークを横抱きにし、アッシュは寝室へとルークを運ぶ。途中にある大きな姿見にはよく似た容姿の男女が映し出されていた。
「アッシュ、俺さ……不細工じゃねぇ?」
「何処がだ?もしかして、あの国はそういう基準なのか?ありえねぇ……眼が腐っていやがる……」
心底信じられないと面持ちで毒づく青年に、ルークは声を上げて笑ってしまった。よく似ている顔だが、彼の方が凛としていて綺麗だと素直に思う。
「俺よか、てめぇの方が綺麗だ。安心しろ」
頬を染めてぶっきらぼうに言われた言葉に同じく頬を赤らめる。
前世で恋人同士になり、魔族である彼に合わせて魔族になる儀式を受ける予定だったルークは……儀式の前に魔族狩りを行う一派に捕まり命を落とした。
死に際のルークにアッシュはあの約束を交わしたのだ。迎えにいくと、新しく想いを交すこともしないと。
こうして顔を合わせていると、思い出せなかった昔の事がどんどん溢れてくる。
ルークはやっと、還りたい場所に戻る事が出来た。見鬼の力も前世からのものだったのだろうと今は納得できた。
つづく