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初めて恋人の部屋を訪れたルカは腕時計を確認して大きく深呼吸した。
ほぼ、約束の時間。
チャイムに伸ばしたルカの手は微かに震えて、押すのを躊躇っていた。
一度、手を握りこみ震えを抑えこむとルカは顔を上げてチャイムを押した。
機械音が響く中、ルカは緊張しきった様子で扉が開くのを待っていた。
微かに鍵を開ける音がして扉が開いていくと中から姿を現した恋人にルカは笑みを浮かべた。
「こんにちは、神威さん……」
「ああ、ルカ。いらっしゃ——」
がくぽがルカを認めて笑みを浮かべると彼女は何故か笑みを消して彼に背を向けて立ち去ろうとした。
がくぽは慌ててルカの細い腕を掴む。
「何故、帰る!?」
きっとがくぽを睨みつけてルカは声を張る。
「お邪魔だったみたいですね……わたし、これで失礼します!」
微かに潤んだ瞳で睨み付けてくるルカにがくぽは焦った様子で引き止めた。
「何が!?」
わからないという態度を見せるがくぽにルカは掴まれた腕を振りほどきながら声を荒らげた。
「他にそういった方がいるのでしょう!?」
「そんなヤツいない! 俺はルカだけだ!?」
「じゃあ、なんで服を着ていないのですか!?」
あっとがくぽの表情に理解の色が広がるとルカの肩を掴み言った。
「俺はいつも家ではこうなの!」
「……はい?」
呆けた表情をしたルカががくぽを見る。
「だから、いつも家では裸なの。ルカが来る前に服着とこうと思ったけど、チャイムで起きたから……」
寝ぼけてたし、うっかり服を着ないで出てしまったのだと。
唇を尖らして納得していない様子のルカになんなら部屋の中を改めてもらっても構わないとがくぽが部屋に誘うとルカはちらりと部屋の中に視線を移した。
ルカが頷くのを見たがくぽはルカを誘い部屋の中に戻っていった。
「誰もいないだろ?」
「わかりましたから、服を着てください」
「逃げたりしない?」
頷いたルカが自分の部屋の中を興味深そうに見ているのを横目にがくぽは服を着始めた。
後書き
うん、半裸編ではがくぽが誤解してましたけど、今回の全裸編ではルカが誤解してくれました。
半裸編とは話は繋がってはおりませんので。たまにはいいねこういう二人も。
by 瀬川 唯
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