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TOA・ボーカロイド中心の二次創作です
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長くなりそうなので前・後に分けました。
こいうた』の後編です。

+ + + + + + + + + +

 

こいうた 後編

 外に出たカイトは我が目を疑った。
 校門から校舎に続く道、そこに金髪の幼い少年と手を繋いでこちらに来る桜色の髪の幼い少女。
 「……ルカ?」
 声が聞こえない距離なのにその呼び声に気付いたようにこちらに向かって駆けてくる。
 「……っおにーちゃん」
 「っルカ!!」
 懸命に自分を目指して駆けてくるルカにカイトは感極まった様子でしゃがみ込み手を広げる。
 人見知りが激しいのに自分を迎えに来てくれるなんて!! いっぱいいっぱい褒めてやらないと!!
 「……あれ、ルカちゃん?」
 遅れて出てきたがくぽにカイトは激しく頷く彼の全身から喜びが溢れている。
 嬉しそうにこちらに駆けてくるルカ。兄弟の邪魔にならないようにとがくぽはリンと脇に寄った。
 花が飛んでいるカイトの前をルカは通過して——そしてそのままがくぽの足に抱きつく。
 「……がくぽー」
 嬉しそうに名を呼び、両手で制服のズボンを握り締めて息を切らせているルカ。
 珍しく放心しているがくぽ。
 手を広げたまま呆然としているカイト。
 しおしおと花が枯れるようにカイトから生気が消えていく。
 周りの人が怖いのか、がくぽの足に顔を隠す少女の肩をそっと引き寄せるがくぽはどこか気まずそうに視線をさ迷わせる。

 


 がくぽと視線が合う前にリンは視線を逸らすとその先に金髪の幼い少年がいた。
 「……レン?」
 金髪の幼い少年——レンはその声に弾かれたようにこちらに駆けてくる。
 リンの前に来た少年は明るい笑顔を浮かべた。
 「リンねーちゃん。迎えに来た!」
 「迎えにって……」
 約束をしているからちゃんと帰るつもりだったリンは戸惑った。そんなに自分は信用が無いのかと。
 リンの態度にレンはしゅんと顔を曇らせる。
 「……ゴメンなさい。メーワクだった?」
 慌ててリンはレンと目を合わせお礼を言う。
 ぱぁっと嬉しそうに笑う少年は続けてルカを指さした。
 「そいつ。校門の近くでみいみい泣いてたから連れてきたんだ」
 得意そうに胸をはる少年にぴくっとルカが細い声で言い返す。
 「……ルカ、泣いてないもん」
 「うっそだー」
 レンの言葉に今にも泣きそうなルカが更に言い返す。


 がくぽの知る少女からは珍しい事だ。
 思わずリンと顔を見合わせて成り行きを見守っていたがくぽの前でついにルカが泣き出した。
 「レンっ……泣かせちゃダメでしょ!!」
 リンがレンを説教している間にがくぽは泣いているルカの側に行くと少女の頭を撫でて目線を合わせる。
 「迎えに来たの?」
 おそらく自分だろうがあまりのカイトのうちひがれようにそれをそのまま口にすることを避けた。
 「そりゃ、がくぽでしょ。ねー、ルカちゃん?」
 リンの言葉に何度も頷く少女を目にカイトが崩れ落ちた。
 「……あのね、ルカね……ケーキ作ったの」
 スカートの裾をぎゅっと握りしめて少女は朱色に染まった顔でがくぽを見上げて訴える。
 まっすぐに自分を見てくる少女の潤んだ瞳とあまりの衝撃に立ち直れずに黒いものを出すカイトの姿。
 心なしか親友から怨念めいたものを感じるが、目の前の少女のまっすぐな曇りのない瞳に吸い込まれるようにがくぽは固まっていた。


 
 目の端を濡らしたルカは不安そうに上目遣いでがくぽを見るが彼はそれに気づいていない。
 見る見るうちに少女の顔が強ばるのを見たリンは、仕方ないと言わんばかりに溜息を零すとがくぽの背を思いっ切りどついた。
 「ルカちゃん、泣きそう……アンタの為に作ったんだよ。喜べよ」
 痛みに顔を歪めたがくぽはリンが指摘すると我に帰った様子で少女に慌てて礼を言う。それを見てリンは満足そうに笑った。
 嬉しそうに身を寄せてくるルカの頭を撫でていたがくぽはリンに声をかけた。
 「俺、ルカちゃんと行くから。またな」
 ひらひらと手を振るリンと別れてがくぽは鞄を持ち替えてルカと手を繋ぎゆっくりと歩き出す。
 ふと少女の小さな白い手が離れる。
 そのままきゅっとがくぽのズボンを握るとルカは後ろを振り返り口を開いた。
 「……レン、くん……あのね……ありがとう……あと、ごめんなさい」
 それだけ口にするとルカはがくぽの足にまた顔を伏せた。
 少女の頭を良く出来ましたというように柔らかく撫でたがくぽは少年に礼を言うと、またルカの小さな白い手を取り歩き出した。

 

 校門から出たところでがくぽの携帯が着信を告げた。相手は少女の母親だ。
 がくぽが出た瞬間に少女の母親が焦った声で話しだす。
 「がくぽ君、ルカが居なくなっちゃたの!? 来る途中に————」
 「メイコさん、ルカちゃんはこっちに来てますから落ち着いてください」
 携帯越しの音から彼女が外を探しまわっているのが分かったがくぽは努めてゆっくりと少女の無事を告げた。
 「ホント……良かった~」
 息を全て吐き出すような吐息を吐いて安堵を滲ませる少女の母親にがくぽは謝った。
 「すみません。これから連れて行きます」
 「あら、がくぽ君が謝ることは無いでしょ? ……後でしっかりルカを叱るからいいわ。じゃあ、また後でね」
 隣に立つ少女を見れば、少女はがくぽと目が合う前に俯いてスカートの裾をぎゅっと握る。
 「……ママ、おこってる?」
 「すごく、心配してたけど怒ってはいないよ」
 少女の頭を撫でたがくぽが笑うとルカは泣きそうなほどに真剣な様子でがくぽの服を掴む。
 「……がくぽは……がくぽはおこってる? ルカ、めいわくだった?」
 か細く震える声と掴む小さな白い手がルカの不安を雄弁に語っていた。
 「怒ってないよ。……びっくりはしたけど迎えに来てくれたのは、嬉しかったよ。……ただ、ちゃんとメイコさんに言ってこないとね?」
 少女と目線を合わせると空色の濡れた瞳が桜色の髪の隙間から覗く。
 その瞳に優しく笑いかけてがくぽは少女の頭を撫でると微かに少女が頷き笑みを浮かべた。
 再び歩き出そうとしてがくぽはルカの物言いたげな瞳に気付いた。
 「……えっと、えっと……あのね」
 もじもじと少女は口ごもり視線をさ迷わせる。
 「抱っことおんぶ、どっちがいい?」
 「……だっこ」
 がくぽが聞くと少女は嬉しそうに微笑み小さな声で答えた。
 少女に自分の鞄を預けてがくぽは少女を抱き上げる。柔らかな匂いと温もりが伝わる。
 歩き出したがくぽにルカが訴える。
 「……あのね、ルカね。……がくぽ、すき」
 「俺も好きだよ」
 嬉しそうにルカが顔を輝かせた。
 腕の中で楽しそうに口ずさむルカの歌をがくぽは歩きながら聴いていた。

 


後書き
小さいルカが書きたかっただけです。カイトのシスコンは浮かんだ時からのものです。
気づいたらメイコさんがお母さんなった以外は特に初期からかまってません。
人見知りが激しいのにくっつき過ぎかなとは思いましたが、今だけできることだからくっつかせました。
色々とネタはあるのでまた書くかもしれません。
by 瀬川 唯
 

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