メルヒェンリピートが止まらない中で浮かんだ話です。
エリザベト的なルカとメル的ながくぽです。
囚われのルカの知る世界は全てがくぽが教えてくれた。
一応、二人ともまだ子どもです。
幼い二人が仲良く戯れているだけの話。
よろしければ追記よりどうぞ
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鳥籠の世界
四角く切り取られた空。
それが幼い頃の私の世界だった。
四角く切り取られた空が澄んだ青から茜に染まり訪れる夜を私は心待ちにしていた。
「それでは、姫様。おやすみなさいませ」
「……おやすみなさい」
寝間着を着た少女の桜色の髪を梳き上げると女性は少女が寝台に入ったのを確認して灯りを消すと部屋を出て行く。
響く足音に耳を澄ませていた少女はそっと身を起こすと扉に向かい扉に耳を押し付けた。
そのまましばらくの間、微動だにせず扉の向こうを窺っていた少女はほっと詰めていた息を吐き出して口元を綻ばせた。
コツン……コツン。
窓から響く音に少女は顔を輝かせると窓辺に駆け寄り鍵を開けた。
微かな音をたてて開かれた窓から顔を出した少年は身軽に室内に滑りこむと少女に笑いかけて潜めた声で話しかけた。
「……ルカ。お待たせ」
「……がくぽ、遅い! レディを待たせるなんてダメじゃない!!」
笑いかけくるがくぽに向かいルカは腰に手を当ててむくれてみせた。
ルカの剣幕に少年は首を竦めて手を合わせる。
「ごめん……ルカ」
「……ばかっ! もう、来てくれないかと思ったんだから!! わたしのこと、っキライに……」
「そんなことないよ!! ぼくは……ルカのこと……キライになったりしないよ」
微かに震え瞳を潤ませたルカの手を慌ててがくぽは握りしめると少女の額と自分の額を合わせ目を合わせた。
「……ホントに?」
「うん、ホントに。ルカのことキライになったりしないよ。……今日は忘れ物しちゃって取りに戻ってたんだ」
「……忘れ物?」
微かに頬を染めてルカはがくぽを見つめる。
頷いたがくぽは一輪の花をルカに差し出す。
「覚えてる?」
「ええ」
花の群生地を見つけたがくぽが一輪だけルカに持ってきた時に見てみたいと少女は言っていた。だけどもその場所は足場が悪く少女の足ではとても連れていくことががくぽには出来なかった。
「見に行こう、ルカ」
「え? でも、ダメだって……」
「うん。違う場所を見つけたんだ。そこの方がきれいだよ!」
「っがくぽ!」
「うわっ」
がくぽの言葉に目を瞠ったルカは戸惑った表情をしていたが続く言葉に表情を輝かせて少年に抱きついた。
突然の少女の行為によろけたがくぽは辛うじて体勢を立て直すと少女の背を撫でた。
「わたし、わたし……」
「うん。見に行こう、ルカ」
「うん!」
体を離したルカが上気した顔でがくぽを見つめると少年は月光を背に受けルカに手を差し出し優しく笑った。
彼が誰かなど私は知らなかった。彼も私が誰かなど知らないでいた。
帝国の皇女と生まれ政略に失脚し母を無くした私は帝都から遠く離れたこの地に幽閉され……彼と出会った。
外に出ることの出来ない私に彼は様々な話を聴かせて、そして様々なモノを私にくれた。
純白の花の群生が月光を浴びて仄かに光を帯びている光景にルカは目を奪われた。
言葉を忘れて立ち尽くすルカの手を引きがくぽは満足そうに笑った。
「気に入ったかい?」
「ええっ……すごくステキだわ!」
がくぽの問いかけにルカは輝くばかりの笑顔を浮かべた。
少女の笑顔に頬を染めたがくぽは花を摘み取ると少女に近寄った。
「つけてあげるよ」
「……かわいくしてよね?」
髪に触り花を飾る少年の仕草にルカは微かに頬を染めてツンとすまし顔で可愛げのない言葉を口にした。
「……きれいだよ」
ルカの仕草にくすりと笑ったがくぽは少女の桜色の髪に丁寧に花を飾ると微笑んだ。
そっと飾られた花に触れたルカは嬉しそうに笑った。
「ホント? ……うれしい!」
『また明日』
そんな約束を無邪気に交わして、朝の訪れに別れて夜の帳が下りて彼に会えるのを私は心待ちに過ごしていた。
後書き
最後のほうが力尽きた感がありますね。
ただ、何も知らずに二人で無邪気に戯れている二人は書いていて楽しかったですが少しむず痒くなりました。
by 瀬川 唯
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