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TOA・ボーカロイド中心の二次創作です
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死した後に川辺で待つのはどう考えてもルカで、がくぽは死した後でも番人なぎ払って出てきた冥府の役人と裏取引してまでルカの元に戻ってきそうだな。
だからこんな話が出来たのです。
こんな感じに↓
が「離せ! 俺は戻る!!」
番人「だから、死んだからだめですってば! 皆さん従っているんですから! 言うこと聞いてください!!」
が「知ったことか! 俺には可愛い妻と妻と妻と妻と妻と妻と妻と妻が待っているんだ!!」
番「妻、多っ!!」
が「何言っとる。可愛い妻は一人だ。……ちなみに可愛いさかりの子供もいるぞ。男と女だ」
がくぽ、堂々と言い切り胸を張る。番人、呆気に取られて何も言えないwwww


という感じですね
よろしければ追記よりどうぞ

+ + + + + + + + + +
 
誓約

 しんと静まり返った深夜の路地にずん、ずんと重い音が響く。その音は一定の間隔で響いていた。
 分厚く雲に覆われていた空。強い風が吹き分厚い雲に切れ目を作るとその隙間から月明かりが差した。
 月明かりに照らされたのは巨大な影。
 丸太のように太い四肢。全身を筋肉に覆われた体躯は仏像を彷彿とさせる影が路地に立っていた。
 さあっと風が吹くと影は鼻をひくひく蠢かした。
 その風に僅かな芳香を嗅ぎとった影はにぃっと嘲笑った。吐き出された呼気が腐臭のような匂いを放ち空気を汚した。
 ずん、ずんと重い音を響かせながら影は風上を目指して歩き出した。



 分厚い雲に覆われ、一寸先も定かではない闇の中。
 路地の片隅に衣を被った人影がうずくまっていた。被った衣はこの闇で辛うじて色鮮やかなものとわかる。
 ふわりと衣から焚き染められた香が薫る。
 どうやら女のようだ。
 焚き染められた香の薫りよりもさらに芳しい、極上の肉の香りに影は歓喜の咆哮を上げ踊りかかる。
 「……ようやく現れたか」
 鋭く長い爪が衣に届く間際、低くよく透る声とともにぱっと立ち上がった人影は後方に飛び退った。
 吹く風に雲が流れ隙間から月明かりが対峙する二人の姿を照らす。
 被っていた衣を無造作に畳んだ人影は夜闇を溶かしたような衣を纏ったすらりと背が高く、長い髪を頭頂で結った男だった。
 口元に涼やかな笑みを浮かべた顔は非常に整っており女性とまごうばかりの顔立ちをその強い意志の光を宿す蒼の瞳が裏切っていた。
 「待ちわびたぞ。鬼」
 腰に佩いた帯刀に手をかけた男から得体の知れない薄ら寒いものを感じて鬼は身構えた。
 「まったく。俺は今、猛烈に機嫌が悪い。わかるか? お前のような雑魚相手に待ちぼうけを食らったことに怒っているんではない。ああ、そうだとも。……ん? なら何故か? 簡単だ」
 鬼は戸惑っていた。
 鬼の放つ妖気に怯むこともその姿形に怯えることもなく男は涼やかな笑みを浮かべたまま、とうとうと訳の分からない事を語っていた。
 「俺の妻が風邪を引いて臥せっているんだ」
 見るものを惹きつけて止まないほどに美しい、清らかといえる笑みを浮かべて朗らかに言い切る男の瞳だけが冷たく光り裏切っていた。
 冴え冴えと煌く蒼が鬼を見据えていた。
 「傍にいてやりたいのに冥府から逃げ出したお前を相手にしなくてはならない事を……怒っているんだ。ん? ああそうだな。この世で一番大切なのは妻だろう」
 妻以上に心動かされた女性はいないし、これから先もいないな。深い教養に裏付けられた振る舞いに天女にまごうばかりの美貌。妻以上に美しく優しく淑やかな女性はいないと彼は断言した。
 また、どれだけ深く愛して、愛されているかを語る。
 語る男は無防備そのもの。鬼の持つ剛力と丸太のように太い腕から繰り出す一撃に即死するだろう。
 しかし、鬼は指一つ動かすことが出来ず、訳の分からない恐怖に駆られた。
 そして、気付いた。
 聞いたことがある。人界に凄絶な霊力を持つ人間がいると。その人間は生きながら冥府の官吏となり人界に害なす存在を狩っていると。その人間の名は――神威がくぽ。
 「冥府の犬か!?」
 心外なと言わんばかりに肩を竦めてみせたがくぽは逃れようともがく鬼に怒りに瞳を冷たく凍らせ底冷えする光を放ち威圧していた。
 霊圧は刻一刻と威力を増し鬼を押し潰さんばかり身体にのしかかる。男からは陽炎のように蒼白い霊威が立ち上る。
 「何とでも呼べ。……俺には、心に定めたことがあるんでな」
 僅かにがくぽが鬼に向かい踏み込む。
 ひゅっと鋭い音。きらりと光が走りがくぽの姿は鬼の背後に。
 「時間がもったいない。とっとと死ね」
 清らかな美しい刃紋の刀を手にがくぽは背後の鬼を顧みて凄絶な笑みを浮かべた。
 微動だにしなかった鬼が動いた。
 ぐらりと身体を揺らして地響きを鳴らして地に倒れこんだ。


 ふっと息を吐いたがくぽは鬼の身につけている布切れで刀の汚れを拭き取ると空を仰いだ。
 月の位置から現在時刻を判断したがくぽは眉を寄せる。
 思ったより時間がかかってしまった。
 舌打ちを一つ放つと手中の刀を掲げる。すっと鍔元に指を這わせて一息に切っ先まで滑らす。
 清らかな蒼光を放つ刀を無造作に振るう。
 辺りに常人の耳には届かない妙なる調べが響き渡る。
 じきにこの音を合図に冥府の番人たちが鬼を引取りに来る。引渡しが済んだらやっと家に、妻の元に戻ることが出来る。

 がくぽはいらいらと時を数える。
 ふいに意識の奥から浮かび上がる。
 

 白く血の気のない顔は悲痛な色に染まっていた。つややかな桜色の髪を艶を無くして乱れていた。
 瞳を大きく揺らしながらも泣くまいと必死に耐えて彼女は何度も震える声で訴えていた。
 『死んだりしたら、許しませんわ。……ええ、絶対にっ、……だから……』
 先に手を伸ばしたのは己の方だった。ただ、彼女を護りたいと、それだけで良かった。
 闇を呼ぶ子だと。破滅を誘う子だと。異形が噂するようにがくぽの周りにはいつも死の影があった。
 それでも、彼が生きてこられたのは父の力と生まれ持った霊力だろう。
 ひたすらに闇に呑まれないように、暴走しないようにと鍛錬を積んだ幼少期を経たがくぽは人と距離を置くようになっていた。
 人と深く関わることが出来なくなっていたのだ。
 そんながくぽを心配した父が連れてきたのが知り合いの年の近い子だった。
 ほわほわした笑顔で寄ってきた彼はがくぽがどれだけ突っぱねようと冷たく当たろうと付きまとい、成長して仕官した今も変わらずにほわほわした笑顔でがくぽの傍にいる。
 煩わしいと思いながらも日々を過ごしていたがくぽはある日、彼女に出逢ったのだ。その時、初めてがくぽは他者の為に力を振るったのだ。
 初めて抱いた感情は理解不能で。関わっては駄目だと分かっていても制御しきれない感情が己にもあるということを初めて知った。
 文をやり取り出来ればいい。それだけを望んでいた心はいつしか際限なく彼女を求めていた。
 そう、彼女の向けてくる想いに気づかないふりをして、己の心を偽って、ただひたすらに彼女の幸せを願っていた。
 それでも、彼女の伸ばして来た手を最終的に取ったのは己で。
 最後の時まで彼女は己を真っ直ぐに瞳に映して、手を伸ばしてくれていた。

 だから、置いてはいけないと。還らなくてはとがくぽは心に定めた。
 境界の川で帰り道を探してがくぽは立ちふさがる番人たちを薙ぎ払い。そして――


 「待たせましたか?」
 柔らかな低音。
 物思いにふけっていたがくぽはその声に我に返った。
 「……これはこれは、御自らお出ましとは恐れ入る」
 皮肉げながくぽの言葉に苦笑した男は外見こそがくぽと変りないが古代の大陸風の衣装を纏っていた。男はがくぽが下に敷いている鬼に目をやった。
 「手早い仕事で。さすがはがくぽですね」
 にこりと微笑む男に毒気を抜かれたがくぽは鬼の上から無言で移動した。
 初対面の時からこの男にがくぽは敵わないのだ。人の良さそうな風情のこの男は番人たちでは歯が立たなかったがくぽを一瞬で倒すほどの力を有す冥府王族でがくぽの直系の上司なのだ。

 「キヨテル。確かに引き渡したぞ。もういいか?」
 今にも背を向け駆けていきそうながくぽをキヨテルは呼び止めた。
 「がくぽ。あなたの迅速な仕事にご褒美をあげましょう」
 心底嫌そうに顔を歪めたがくぽにキヨテルは袂から小瓶を取り出してがくぽに差し出した。
 「神界の薬酒です。疲労回復、滋養強壮に効果があります」
 「……」
 朗らかに笑うキヨテルの差し出す小瓶をがくぽは疑わしそうに見た。
 ここでこれを受け取ったら次はどんな厄介ごとを押し付けてくるか。
 保身の為なら受け取らないほうがいい。が、未だに微熱と咳が残る妻のことがよぎる。
 「別にこれで何かさせようなど企んでませんよ。……これは臥せっているル――」
 「――人の妻の名を気安く口の端に乗せるのが、冥府王族の礼儀か」
 低く冴え冴えと冷たい声。キヨテルの喉元に当てられた冷たい感触。
 大気すらも凍てつかせんばかりのがくぽにキヨテルは逆鱗に触れてしまったと思う。
 「失礼しました。がくぽ。……ですからこれは納めなさい」
 刀を納めたがくぽの手にキヨテルは小瓶を握らす。
 ふんっと鼻を鳴らしてがくぽはキヨテルに背を向ける。
 「神威がくぽ。約定を忘れてはいないな」
 凛と響く声にがくぽは背後を振り返る。
 キヨテルからそれまでの柔らかさが消えて厳格な裁定者の顔をしていた。
 「分かっているさ」
  石牢で目覚めたがくぽはキヨテルと取引をした。

 一つ、理を乱して人界に戻す代償に冥府の手を逃れて人界に害なす存在を狩る。
 一つ、その役目は生を返上しようと逃れることは出来ない。
 一つ、約定に反し、誤り、理を犯した場合は輪廻からも抹消される。
 ……そして、妻の死と同時に冥府に渡るというもの。

 「違えたり、誤ることは無い。……俺は、ルカの傍に居る。ただ……それだけだ」
 そのためだけにがくぽは還ってきた。
 強い意志の宿る偽らざる蒼にキヨテルは頷く。
 「ならば、ゆめゆめ忘れるな。その身に課した約定を。お前が選んだ命運を」
 その言葉を残して冥府王族と鬼の姿は掻き消えた。


 分かっているさ。それぐらい。
 大切なものは他にもある。それでも、がくぽはルカ一人を選んだ。
 それは残酷な選択。狂気を孕んだ答え。
 それでもがくぽは後悔などしてない。
 伸ばしたがくぽの手はルカに気づかれないうちに下ろされていた。それで終わるはずだった縁。
 彼女の幸せを願うがくぽに伸ばされたルカの手を悩み苦しみながらも取った時、己が彼女の為に、彼女の笑顔の為に、幸せの為に出来うる全てをやろうと心に決めたのだ。

 
 その為ならばこれぐらい、何でもないことだ。
 頭を振り気持ちを切り替えたがくぽはルカの待つ家に足を向ける。その道を月明かりが照らしていた。



おまけ
 灯台の炎が揺れる室内。置かれた火鉢に赤々と火が熾っていた。温かく温められた室内を単姿の女性が茵の上に身を起こしていた。
 その姿に傍に付き添っていた金髪の少女と緑の髪の幼い少年がため息をついた。
 「ルカ様。がくぽ様がお戻りになったら、教えますから横になってください」
 金髪の少女が何度目か分からない言葉を口にすると、女性もまた何度目か分からない言葉を返す。
 「ええ。だからがくぽ様がお戻りになったら横になるわ」
 「いえ、ですから……」
 「廊に出なければいいのでしょう?」
 「それは言葉のあやです」
 ころころ笑うルカと頭を抱える少女を交互に見た少年が口を開いた。
 「リリィの負けですね」
 妻戸から外に出ようとしていたルカに待つなら室内で! と言ってしまったリリィは無言で少年を睨みつけた。
 「だったら、リュウト、あんたがどうにかしなさい」
 リリィの言葉にリュウトはルカを見る。
 「起きていられたは我々が怒られます。お待ちになるのは横になっていても出来ると思いますが……」
 「……後もう少しだけ。ね、いいでしょう?」
 手を合わせて訴えるルカにリュウトはぱちぱち瞬き肩を竦めた。その傍でリリィが音もなく崩れた。
 がくぽ様といい、ルカ様といい言い出したら一歩も引かないのだ。
 キヨテルからがくぽ補佐にと差し向けられたリュウトとリリィは人ではない。冥府に仕えているものでがくぽやルカより遙かに長い生を生きてきたが敵わないのだ。
 だからリュウトとリリィはルカの風邪が悪化する前に、一刻も早いがくぽの帰還を待つ。
by 瀬川 唯

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