流血、グロ、死体描写ありの死ネタです。
しかも、かなりちゃちな感じに仕上がっていますので、楽曲が好きな方はリターンをお勧めします。
アシュルクなのは標準装備。
それと今までに比べて長いです。私の書いたものにしては。
長い!!と思ってたので読みにくい場合は伝えてください直します。
ルークは左目の上に巻きつけた包帯を巻きなおすと懐から薬を取り出し、そのまま唾液のみで飲み下した。この薬は自分を作った科学者であるジェイドが作り出した興奮剤だ。飲むと気分が高揚し破壊衝動を加速させていく。
もう直ぐ丑三つ時だ。
今宵は最高の獲物を見つけた。
わくわくする。
今まで命じられる通りに破壊の限りを尽くしてきた。その際に顔をあわせた特殊軍に属する深紅の髪の男。あの男は特別だ。今まで感じた事が無いくらいに……
この手で壊してみたい!!!!
こみ上げてくる哄笑を堪えルークは銃に弾薬を詰めていく。こんな衝動は初めてだ!!
先ほどの深紅の髪の男の部下と思わしき緑色の髪の小柄な奴は物足りない相手だった。掌を広げ殺した少年の血が指先を綺麗に染め上げてる事にだけは満足しているが……。
どうして皆こんなに楽しいのに堪えるのだろう。皆だってナニカを破壊すると楽しいに決まっている。吐き出してしまった方が楽なこの感情に身をゆだねて何も考えなくても良いとさえ思っているのに。
あの男の部下が最後の力を振り絞って仕掛けてきた攻撃により付けられた発信機をそのままにルークは獲物の到着を待つ。
そう言えば、あの男も片目を眼帯で隠していた。
自分と同じ様に潰してしまったのだろうか?
何でこんなに気になるのだろ。人間なんて脆い、怪我をしていてもおかしい事なんて無いのに。
こんな思考必要ない、自分は『捨てられた人形』なんだ。
ーーーーーーーー
左手の指を打ち鳴らすと、部下の一斉射撃が終わる。
目の前には巨大な犯罪組織に属する諜報員の物言わぬ器が地面一面を埋め尽くしている。
これでいい。彼らには粛清が必要なのだ。
かつての自分から右目を、そして大切な最愛の弟を奪い取っていったのだから。
偶然なんてものはありもしない。この粛清は当たり前の筋書き通りなのだ。部下に後始末を命じ、上官であるヴァンの元へと足を向ける。
心なしか表情が硬い。
「アッシュ、シンクがやられたらしい。応答が無い」
「そうですか」
「だが、発信機を付ける事には成功したようだ、どうする?」
「私が向います。小隊長がここを離れては、部下の統率に支障が出るかと……」
アッシュの発言に頷くとヴァンは小隊に号令を出し始める。
「アッシュ」
発信機の示す所に向かうアッシュにヴァンが声を掛ける。
「お前を拾い、ここまで育てたのは私だ。失望させるな、一定時間戻らないなら捜索させる」
「了解」
ヴァンの心配は必要の無いものだと思ったが、上官に意見する必要もなかった。
自分の目的は全ての悪を追い詰め塵も残さず粛清する事のみ。
所詮は落ちぶれた『カラクリ人形』なのだ。
絶対に逃したりはしない。終わりの無い破壊を続けるだけのガラクタだ。
ヴァンが何故、自分を生かすか疑問だが……。
もう直ぐ丑三つ時だ。
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丑三つ時になってからアッシュは標的の白い着物を着た暗殺者の元へと辿りついた。これから命のやり取りを行う地獄のような時間が待っている。
相手の男は似たような背格好に二丁拳銃を携えた片目の人物だ。何か薬物をしているのかふらふらとした足取りと定まらない焦点。何が楽しいのか薄ら笑いを浮かべてこちらを見ている。
対照的にアッシュの服装は黒い軍服にしっかりとした足取り。そして凍てついた様な無表情だった。
標的は初動作も感じさせない動きで銃を発砲した。それよりも早くアッシュは相手の懐にまで駆け込んでいたのだが……。アッシュの音の無い早い剣戟に驚いた様子で反射で後ろに相手は飛び退る。その際に足で打撃を与えていくのを忘れず、アッシュは諸に腹部にダメージをおったのだが……。
((強い))
アッシュは息を吐き出し、ダメージを散らす。相手は銃をこちらに向け再び打ちはなつ。その間までの動きはとても常人ではありえない動きだったが……。アッシュは打ち込まれた銃弾を切り裂くと言う人間離れの芸当をしてみせる。軽い音と共に地面に弾けた弾丸を薄ら笑いを引っ込めた相手が愕然とした顔をして見詰めている。
しかし、その隙も一瞬であった。弾丸を切った時の剣戟はそのまま空気を動かし剣圧だけが標的の身体を切り裂いたからだ。
「!」
だが、怯んだのは瞬きする間のみでまた銃を乱射する。それの切り落としかわし相手の懐に飛び込んだアッシュは肩から袈裟切りに刀を振り下ろした。
ガキィ!!
鈍い武器同士がぶつかり合う鈍い音が響く。鍔迫り合いの力通しの押し合いになり、標的が少しだけ押され始める。力はほぼ互角。アッシュの優勢は先ほどの剣戟で出来たかすり傷による福音だった。
力を込めて相手の隙を狙い、一層顔を近づけた際……アッシュは目を見張った。
「ルーク?……」
酷く幼い声が、辺りに響く。
圧倒する力が弱まると同時に呼ばれた名前に、心臓が強く脈打つ。
ルークは弾かれた様に顔を上げる。今、確かに虚ろだった子供の頃の記憶を揺さぶる何かがあったのだ。僅か数センチの距離に……左右対称の片目の顔が存在した。
忘れていた筈の幼い記憶が溢れてくる。それと同時に力が抜けその場に膝を付いたが、相手も同時に刀を引いていた為に怪我を負うことはなかった。
「にいちゃん……」
アッシュが出した幼い声に良く似た、否……同じ声がアッシュに向けて言葉を発した。先程までルークの中に駆け巡っていた破壊衝動はなりを潜め、今は子供のような泣き顔で生き別れになっていた兄をただ見詰めていた。
「ルーク!!」
アッシュはそう叫ぶと持っていた刀をかなぐり捨て、愛しい半身を抱きしめる。ずっとずっと求めてきた、探し続けた半身だった。
子供の頃、二人で自宅近くの野原だ遊んでいた時にやってきた白衣の男性とその部下。抵抗するアッシュの右目をルークの左目を潰し……激痛で気絶したルークを奪い取っていった。痛みに耐え、抵抗を続けるアッシュを激しく打ち付けて……。
気付いた時にはアッシュも見知らぬ部屋にいた。今ならわかる。
実の両親によってルークは犯罪組織に、アッシュは軍に売られたのだ。
「にいちゃん、にいちゃん……」
抱きしめ返してきたルークは何度もそう呼び、アッシュの胸に顔を擦り付ける。軍服からは血と汗と……それでも懐かしい兄の匂いがした。
目の前で血を噴出す目を押さえ吠えた兄の姿が脳裏に蘇る。なぜ、こんなに苦しくてかなしいことをわすれていたんだろう?
「ルーク、ルーク。会いたかった……」
もう、ただの兄弟には戻れないくらいにいとおしく思っていたんだ……。
「にいちゃん、いたい?」
そうっとルークが右目の眼帯をなぞる。その手を取り、頬に押し付けながらアッシュは首を振る。涙が溢れて顔が良く見えないのが不満だった。
このまま軍には戻れない。それはルークも同じ。
そして自分達は彼らの手により付けられた首輪がある。
逃げても必ず見つかってしまう。
「痛くない、もう治った。お前はあたたかいな、安心する」
「俺も、にいちゃんとくっついてると安心する」
嬉しそうな弟の笑顔見詰めて、アッシュは再会できなったうちにルークが強いられてきたであろう日々を思い、苦々しく思う。
子供の頃から優しい性分だったルーク。犯罪者達の手によって殺戮を繰り返してきたであろう過去。薬を飲んでいる風にしか見えなかったさきほどの様子から導き出される事など1つだけだ。
奴等は薬と実験でルークの破壊衝動を強力なものにし、理性や本来の性質がもたらす優しい心を踏みにじってきたのだ。
たまらず、地面に弟の身体を押し倒すときょとんとした表情を浮かべてルークが自分の影から見上げてきた。
「ルーク」
名前を呼んだだけで、ルークはアッシュのしようとすることがわかったのか硝煙の匂いを纏っている人間には不似合いな程に綺麗に笑って見せた。
行為の後、差し出した水をルークは飲み干していく。
「ごちそうさま」
そう言い、水筒をアッシュに返すとルークはそのままアッシュの腰に抱きついてきた。
「にいちゃん、俺死ぬならにいちゃんにころされたい」
「ルーク……」
「帰れないし、にいちゃん以外にころされんのも嫌だ」
「ルーク、俺もお前に殺されるなら本望だ」
物騒な会話を続けながら愛しい髪を指で梳いてやるとルークはまるで猫の様に目を細めた。
「どうしよっか。ジェイドは薬飲まないと発狂するって言われてんだ、俺」
「そうか」
「うん」
「いっそ、心中するか?ルーク」
兄の言葉にゆるゆると顔を上げて、そのまま首筋に縋りつきルークは静かに頷いた。
ヴァンがアッシュに付けた発信機を頼りに辿りついた場所は崖の近くの入り江だった。そこに打ち上げられた二人の遺体は手錠で互いを繋ぎ合わせ、抱きしめあう体勢で事切れていた。
アッシュの腹部には銃創が、ルークの腹部には刀で貫いた傷が残っていた。
互いに致命傷を与えた挙句に、崖から飛び降りたのだろう。一部の隙も無く死ねるように。
ジェイドの姿もあり、亡骸の検視をしているようだった。ヴァンに気付くと何も言わずに車に乗り込んでしまい。結局一言も交わさずにジェイドはその場を後にした。
ヴァンが歩み寄り、二人の亡骸の顔を確認すると今まで一度も見たことがにほどに……安らいだ表情をしていた。
END
途中でエロはカットしました。入れないほうがまとまったので。
この曲大好きなんで!頑張りました! 秋音鈴