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一人残された状態でもこみあがる恐怖が消えず、全身を襲う震えで歯の根が合わずがちがちと音を立てている。ここは何処なのだろう? 彼らは何者なんだろう?
どうして自分をここに連れてきたのだろう? 彼は今、どうしてるのだろう?
(かえりたい……)
二人で暮らす、あの家に帰りたい。彼の側に帰りたい。恐怖と罪悪感に潰されそうになる精神が、必死に抗う。
贖罪の方法も、自分は知らない。
この恐怖から逃れる方法も、解放される術も、知らない。
全部無かった事にして欲しいわけではない。事実、アッシュは罪過が無かったことにはしなかった。
しなかったけど、一緒に背負ってくれた。半分引き受けてくれた。
記憶が無くても、そう確信している。
だからこそ、かえりたい。
帰還してから、年に一度だけ海まで花を手向けにいく。海の中にぽっかりと空いた穴に滝のように水が落ちる場所がある、そこに近づくのは危険だから海流で花が流れていくように手向けるのだ。関所の近くだから人に会う危険もあるが年に一度だけ必ず行くのだ。
気休めの自己満足でも。
自分がそこで何をしたか覚えていなくても。
共に背負ってくれる半身がいるのだ。一人で償わなくて良いといってくれる愛しい人。
今年はまだ、行っていない。
「帰ろう」
帰りたい理由はたくさんあって、一番大きいのは結局はアッシュから離れたくないからだった。他はごちゃごちゃしすぎていてわからない。
決めたら自然と涙は止まった。止まらなくても行くつもりだった。
恐怖も罪悪感もあるが、足が竦みあがるが寝台から降りて窓へと足を向けた。
帰るには逃げなくては……。
今回は短めで。6へ
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