天界と魔界は隣接して存在している。しかし、そのままでは互いに干渉しあい食い合う恐れがあった為、今は間に二つの世界両方に所属する空間があった。
そしてその遥か下に人間が住む世界が広がる。すべてが神と魔王によって造られた世界。
アッシュはそのクッションとして存在する世界の管理人をしていた。同じ様に魔族の管理人も居るようだが、アッシュは顔をあわせた事もない。
日課となっている見回りの最中、空中に浮かぶ島の泉の畔にくったりと横たわる朱を見つけた。魔族の様だ。ここの管理人はヴァンという人物で砂色の髪をした男だったはずだ。
「ならば、ヴァンの知人か? 」
ひらりと舞い降り、その人物に近づく。目の上に腕を乗せ少しでも刺激を減らす努力をする様子からかなり消耗しているとわかる。
この空間はどちらにも所属し、どちらにも所属していない事になっている。たまにこうして迷い込んでしまう者がいるが、それでは都合が悪いらしい。管理人を置き、そういった者を住むべき世界に帰るように促す。それが管理人たるアッシュの役割。
「おい、何をしている」
「え……、あれ? あんた……」
ぼんやりと見詰める翡翠の眼をアッシュは辛抱強く見詰めた。
「あ、俺……おなかすいて……動けない」
情けない事を言いつつ魔族が体を起こす。ふわりと鼻腔を擽る香りに眉間に皺がよる。
「食い物はない」
「ん、ん~。大丈夫、あんた持ってる」
観察する様に眺め、朱はくすくすと笑みを浮かべる。空腹だけでここまで消耗するのだろうか? 見たところ、魂食いをするタイプには見えない。髪や生気を糧にでも……。
「ぅ……」
突然膝が崩れ、草に覆われた地面に座り込む。眩暈に似た酩酊に思考が霞む。甘い香りが強く鼻に付く。膝をつくのも辛い。
トンっと魔族の青年がアッシュの肩を押し、そのまま抵抗できずにあお向けに倒れる。
「悪いな、でも気持ちよくはするから」
にっこりと無邪気に微笑む彼から、むせ返る香りがした。
「淫……魔……? 」
「うん」
とろりと意識が溶けて、目の前にいる魔族の翡翠の眼に呑まれて行きそうだった。否、呑まれる。
「名前、教えろよ」
「アッシュだ……」
「アッシュ……」
何度か唇に馴染ませるように淫魔が繰り返し名前を呼ぶ、その間にも、淫魔の手はアッシュの下肢を覆う布を剥ぎ取り露わにしていく。天使は性交を必要としないが、そのつくりは魔族や人間のそれと同じだ。
胸元を寛げ、淫魔はそのままアッシュの胸に舌を這わせながら、アッシュの性器に指を絡める。そのまま、胸から脇へと舌が降りていく。淫魔というだけあり、その動きは性感を高める術を心得ているようだ。
脇の性感は刺激をうまく与える事が出来れば効果的だが、擽る感触が性感を散らす場合もある。しかし、淫魔の動きは阻害するものではなく高めるもの。
取り出された性器は先走りを零し始め、その様子に淫魔は喉を鳴らす。その意味は、二通りだろう。性欲と食欲。
竿の下の袋を手で揉しだき、舌をゆっくりとカリからくびれまでの舐めまわす。ちらりと意味ありげに見つめたと思った時には口いっぱいにアッシュのものを銜え込んで来た。
手と舌、唇から全てを駆使し悦楽を与えてくる淫魔は宣言通りに溺れそうな快楽を与えてくる。息が乱れ、体が火照るのが止められない。
抵抗しようという意識は初めから起きないのは、淫魔の術に捕まったからなのだろう。
淫魔が服を全て脱ぎ、そっと上体を起し見守っていたアッシュの上に馬乗りになる。真正面から顔を見られ、その眼に視線が合うと、今まで以上に思考が保てない。
「ルークって呼んで」
耳元で甘く艶やかに囁き、口付ける。ひどく甘く感じる唇と柔かな舌に、感じた事の無い興奮を覚え、アッシュは夢中で舌を絡めあわせて角度をかえる。
くちゅくちゅと音をたて舌が絡む、その最中にルークは自身の蕾に指を差し入れ広げ、そのまま屹立した性器を押し当てゆっくりと身体を沈めていく。
「あ、あ、ああ! んぅ! 」
満たされていく感覚にルークは甘く鳴く。この場所に迷い込み、ずっと空腹だった事もあり餓えた体は貪欲に男を求める。
勃起した性器が熱く前立腺を刺激するたび、ルークはアッシュの腹に大量の白濁を放つ。いつの間にか、ルークの動きにあわせてアッシュも腰を動かし、その動きに益益ルークは乱れ、腰を振る。
「ああああ!! イイ! い……あぅ」
「っ……クソ、この屑淫魔!! 」
ガクガクと揺すぶられながら、強引な動きに翻弄されルークは意識を飛ばし、最後の強い突き上げに悲鳴を上げて喉を仰け反らせる。
ずるりとアッシュの上に倒れこんだ。
「ったく!! てめぇ!責任取れよな!? 」
「わかったって! 知らなかったんだよ! 一回でも魔族とセックスしたら堕天するなんて! 」
「うるせぇ! 普通は知ってる常識だ! 」
「なんだよ! 最後はノリノリだったくせに! 」
「そもそも、てめぇが誘惑術なんて使うのが悪いんだろう!? 第一! なんでこの場に居たんだ!? お前は淫魔なら魔界か人間界しか用なんてないだろう!?」
「だって! ここじゃなきゃ、お前居ないだろ!? ずっと前からお前のこと好きだったのに! 」
「なんだと? 」
「え? ……あ、今の無し! なしなしなし!! 」
魔界に通じる門を潜りながら、じゃれ合う二人にそっとアッシュの教育官を勤めた天使が涙を拭いたとか拭かなかったとか。
アッシュ自身は堕天した事に頓着していない様で、ルークは肩透かしを食らったように思いつつ、自分のうっかり告白にまんざらでもないアッシュに胸を撫で下ろしていた。
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