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輪廻の輪…?
時に遡る意識は混濁し始めていたが…アッシュは己を奮い立たせる。
大爆発…レプリカの体。予想はしていた乖離。自分のせいで犠牲になったルークの命を無駄にするのは心が痛むが…それでも取り戻したい命がある。
『人もレプリカも輪廻に寄り添い転生する。しかし…時を逆らうは大罪。その罪を犯す者は輪廻から外され未来永劫に渡り転生すら赦されず地上に留まる』
死んでも魂のみが地上に残るのか…?
『否…二度と死なぬ身になる。命を落とす病にかかる事もなく…大怪我を負い命を落としても、しばし待てば蘇生する。老いは訪れず、親しき者は全て死に絶えても生きる事になる異質な存在に変えられる』
それは永劫に渡る孤立 牢獄は時間となりてお前を蝕む
『今ならまだ間に合う。乖離は止められぬが…輪廻の輪からは外れぬ』
駄目だ…ローレライ。何の為にお前を呼んだ。俺一人では到底無理だ。力を貸せ。ルークを二度と大爆発で死なせない。死なない体になるならいっその事わかりやすい。大爆発でルークは死なないのだから。
『しかし…それでも危険過ぎる』
乖離するならルークを助ける道を選ぶ。
さあ…早く
『我が愛しき子よ…。ならば乖離した時に我はお前を守ろう。過去のお前を殺す事になるが…過去のアッシュ…その中にお前を導こう』
そして…彼を喰らうがいい…。
目が眩むような第七音素の金の光。体は耐え切れず…しかし、何かに護られているのがわかる。
ローレライ。
次に意識がはっきりした時にはダアトの廊下に蹲っていた。頭に手を当てて、何かに耐えていたようだ。…おそらく耐えていたのは何かに侵食される感覚だろう。
「アッシュ…、大丈夫、ですか?」
「いきなりなんなのさ、これから会議だよ?」
この一年半の間に聞くことが無くなった懐かしい幼い声。あの戦いで命を落とした二人の同僚…シンクとアリエッタ。もう少し自分に余裕があれば少しだけでも彼らの力になれたのかも知れないと考えた事もある。しかし、それは驕りなのだろう。
それでも、回避できるならしたい。彼らは精神的にも幼いのだから。
しかし、今はそれに構っていられない。この間にもルークに何か有るかもしれない。
「すまん、大丈夫だ」
「別に…」
「アッシュ、顔色悪い…です」
きゅっとアリエッタの手が服の裾を掴む。本気で心配してくれるのがわかる。彼女も、そしてシンクも…心根は決して曲がってはいなかった。全てを狂わせたのは預言であり、ヴァンなのだろう。
ヴァン…尊敬する師。父親の様にも思っていた。
預言により全てが狂い、そして…ルークが生まれた。
(ルーク…)
覚悟しなければいけない。この世界のルークは決して…自分の知るあの強く儚い命ではないのだから。…そこまで考えて…何故か酷く胸が痛んだ。覚えていないのでなく、知らない。まだ知られてもいない。
彼は…自分を知らない。きっと気味が悪いと最初は拒む、そして…『あの時』の様に剣を向けてくる。
知らず、体が震えた。
この身に宿っていた今の時間の自分は本当に自分が食い殺したのだろう、欠片もあの憎悪が溢れてこない。
その代わりに、ルークに拒絶される事を恐れる弱い心が騒ぐ。
この気持ちはまるで、幼馴染のあの姫に向き合った時に感じたものと酷似している。
レプリカでなく、自分に気づいて欲しい。此処にいる。…だから…こっちを向いて…そんな、思い。幼い頃の悲しい記憶。
ヴァンの元で何もしなかったわけではない。もみ消されると知っていて手紙を書いた。鳩を飛ばした。隙を見て逃げ出した。
そしてそこで目の当たりにした絶望。母はレプリカを抱きしめて『ルーク』と呼び。父は戸惑いながら母に甘える『ルーク』を見ていた。ガイもナタリアも自分に気づかず…。その時に感じた思い。
忘れないで。こっちを見て。気づいて。
『俺』でなくてもよかった。
その記憶が酷く今、アッシュを揺さぶる。自分の事を何一つ知らないルーク。
それはまるで、あの子供の頃の大切なもの全てが意味の無いものに感じた時の虚無にも似ている。
眩暈にも似た何かと胸がたとえようの無い不思議な痛みに苛まれる。
「アッシュ!!」
グン!!っと服の裾をひっぱり、アリエッタが強く自分を呼ぶ。
「ちょっと、ホントに変だよ?アンタしっかりしなよ」
シンクの辛口の言葉、でも何だかあたたかい。
「あ、ああ。すまん」
そうだ、今は自分の思考に埋まるわけにはいかない。…そう、口約束で将来を誓い合ったあの姫に向ける以上の恋情に似た想いなどきっと気のせいだ。彼も自分も…同じ性の存在なのだから…。
「急ごう、俺のせいで会議に遅刻なんてしたら…リグレットが五月蠅い」
時に遡る意識は混濁し始めていたが…アッシュは己を奮い立たせる。
大爆発…レプリカの体。予想はしていた乖離。自分のせいで犠牲になったルークの命を無駄にするのは心が痛むが…それでも取り戻したい命がある。
『人もレプリカも輪廻に寄り添い転生する。しかし…時を逆らうは大罪。その罪を犯す者は輪廻から外され未来永劫に渡り転生すら赦されず地上に留まる』
死んでも魂のみが地上に残るのか…?
『否…二度と死なぬ身になる。命を落とす病にかかる事もなく…大怪我を負い命を落としても、しばし待てば蘇生する。老いは訪れず、親しき者は全て死に絶えても生きる事になる異質な存在に変えられる』
それは永劫に渡る孤立 牢獄は時間となりてお前を蝕む
『今ならまだ間に合う。乖離は止められぬが…輪廻の輪からは外れぬ』
駄目だ…ローレライ。何の為にお前を呼んだ。俺一人では到底無理だ。力を貸せ。ルークを二度と大爆発で死なせない。死なない体になるならいっその事わかりやすい。大爆発でルークは死なないのだから。
『しかし…それでも危険過ぎる』
乖離するならルークを助ける道を選ぶ。
さあ…早く
『我が愛しき子よ…。ならば乖離した時に我はお前を守ろう。過去のお前を殺す事になるが…過去のアッシュ…その中にお前を導こう』
そして…彼を喰らうがいい…。
目が眩むような第七音素の金の光。体は耐え切れず…しかし、何かに護られているのがわかる。
ローレライ。
次に意識がはっきりした時にはダアトの廊下に蹲っていた。頭に手を当てて、何かに耐えていたようだ。…おそらく耐えていたのは何かに侵食される感覚だろう。
「アッシュ…、大丈夫、ですか?」
「いきなりなんなのさ、これから会議だよ?」
この一年半の間に聞くことが無くなった懐かしい幼い声。あの戦いで命を落とした二人の同僚…シンクとアリエッタ。もう少し自分に余裕があれば少しだけでも彼らの力になれたのかも知れないと考えた事もある。しかし、それは驕りなのだろう。
それでも、回避できるならしたい。彼らは精神的にも幼いのだから。
しかし、今はそれに構っていられない。この間にもルークに何か有るかもしれない。
「すまん、大丈夫だ」
「別に…」
「アッシュ、顔色悪い…です」
きゅっとアリエッタの手が服の裾を掴む。本気で心配してくれるのがわかる。彼女も、そしてシンクも…心根は決して曲がってはいなかった。全てを狂わせたのは預言であり、ヴァンなのだろう。
ヴァン…尊敬する師。父親の様にも思っていた。
預言により全てが狂い、そして…ルークが生まれた。
(ルーク…)
覚悟しなければいけない。この世界のルークは決して…自分の知るあの強く儚い命ではないのだから。…そこまで考えて…何故か酷く胸が痛んだ。覚えていないのでなく、知らない。まだ知られてもいない。
彼は…自分を知らない。きっと気味が悪いと最初は拒む、そして…『あの時』の様に剣を向けてくる。
知らず、体が震えた。
この身に宿っていた今の時間の自分は本当に自分が食い殺したのだろう、欠片もあの憎悪が溢れてこない。
その代わりに、ルークに拒絶される事を恐れる弱い心が騒ぐ。
この気持ちはまるで、幼馴染のあの姫に向き合った時に感じたものと酷似している。
レプリカでなく、自分に気づいて欲しい。此処にいる。…だから…こっちを向いて…そんな、思い。幼い頃の悲しい記憶。
ヴァンの元で何もしなかったわけではない。もみ消されると知っていて手紙を書いた。鳩を飛ばした。隙を見て逃げ出した。
そしてそこで目の当たりにした絶望。母はレプリカを抱きしめて『ルーク』と呼び。父は戸惑いながら母に甘える『ルーク』を見ていた。ガイもナタリアも自分に気づかず…。その時に感じた思い。
忘れないで。こっちを見て。気づいて。
『俺』でなくてもよかった。
その記憶が酷く今、アッシュを揺さぶる。自分の事を何一つ知らないルーク。
それはまるで、あの子供の頃の大切なもの全てが意味の無いものに感じた時の虚無にも似ている。
眩暈にも似た何かと胸がたとえようの無い不思議な痛みに苛まれる。
「アッシュ!!」
グン!!っと服の裾をひっぱり、アリエッタが強く自分を呼ぶ。
「ちょっと、ホントに変だよ?アンタしっかりしなよ」
シンクの辛口の言葉、でも何だかあたたかい。
「あ、ああ。すまん」
そうだ、今は自分の思考に埋まるわけにはいかない。…そう、口約束で将来を誓い合ったあの姫に向ける以上の恋情に似た想いなどきっと気のせいだ。彼も自分も…同じ性の存在なのだから…。
「急ごう、俺のせいで会議に遅刻なんてしたら…リグレットが五月蠅い」
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