雪を見ていたらなんとなく浮かんできました。
ぽルカ前提でルキくこ?だと思います。
がちゃぽやリリィも初登場ですね。
書いているうちにルキのシスコンやがくこのブラコンが判明しましたが、まとめられたと思います。
長くなるので前後に分けました。
雪遊び 前編
昨夜遅くまで起きていたリリィは朝寝を決め込んでいた。
肌寒さに薄目を開けて彼女は布団を手繰り寄せてしっかりとくるまって布団の温もりにリリィは笑みを浮かべると満足そうに目を閉じる。
ばしっと何かが彼女の部屋の窓に当たると外から彼女を呼ぶ、賑やかな声が響いてきた。
『おーい、リリィちゃーん!』
ぴくりと肩を揺らしたリリィは無視を決め込むように頭まで布団を被った。
『おーい、リリィちゃーん!』
ばしっと窓ガラスにまた何かが当たった。リリィが顔を出すまで止めるつもりは無いのが何度も響く音で分かった。
「だー、うるさーい! 一体、何!?」
耐え切れずに跳ね起きたリリィは窓を開けて怒鳴った。
ばしっとリリィの顔面に何かが当たった。続けて肩や体にも当たる。
「つめた!? ……雪玉?」
冷たさに慌てて払い落としたリリィは胡乱気に眉をひそめた。
「おおー、すっごーい! 当たったよ~」
無邪気な歓声にリリィはキレた。
窓を閉めるとしっかりと防寒対策を整えて部屋を飛び出した。
荒々しく階段をリリィが降りると兄のがくぽが呑気に声をかけた。
「起きたのか? 今、ちょうどカイトたちが遊びに来ておるぞ」
「知ってます!」
きっと睨むように言うとリリィは玄関を目指す。その後ろ姿にがくぽは苦笑を浮かべた。
庭に躍り出たリリィはすぐさま雪を掴み装備を整えた。
「あー、リリィちゃん。こっち~」
姉のグミが彼女に気付き、笑顔で手を振っているとその背中に雪玉が命中した。
べしゃっと突っ伏したグミを背に庇うとリリィは勇ましく立ちはだかる。
「背を向けている人を狙うのが流儀か!」
おのれ、卑怯な! と睨むリリィに慌ててリンが弁明した。
「違う、違う! 投げたのはがちゃぽ君だよ!」
「お姉ちゃん……だいじょうぶ?」
駆け寄ってきた弟のがちゃぽはグミを心配そうに見るとグミは笑顔で大丈夫と笑った。ほっとしたようにがちゃぽは笑うとリリィに頭を下げた。
「リリィお姉ちゃん、ごめんなさい」
上目遣いに謝る弟の頭を軽く小突くとリリィは心配そうに見ていたリンたちに向き直ると素早く雪玉を作り投げつけた。
「きゃっ!?」
「……油断大敵、ですね」
リリィの投げた雪玉はメイコの顔を直撃した。ふっとリリィが笑みを浮かべるとメイコがリンたちに指令を飛ばす。
「……やったわね。あんたたち、やっちゃいなさい!」
メイコの指令にリンたちが声を上げた。
「ルキ……アンタ、こっち来なさい!」
5対3。圧倒的に不利な状況に離れたところで不参加を決め込んでいたルキに声をかける。
「……え~。ヤダよ。めんど——」
嫌そうな顔をするルキに流れ雪玉が当たった。
無言で雪を払い落としたルキはグミが作っている雪玉を手に取るとカイトたちに投げた。
5対4。一つ頷いたリリィはまた雪玉に手を伸ばした。
楽しそうな歓声が響くインタネ家の庭の一隅でルカはがくこの手ほどきを受けていた。
しゃがみ込んだ二人は向かい合わせで手を動かしていた。
「……こう、ですか?」
「はい」
雪を手に取り慎重な手付きで丸めるルカの顔は真剣そのものだった。
微かに笑みを浮かべてがくこは目を細めて彼女を見守った。
幼い頃、雪の日に兄のがくぽと二人して作った雪うさぎを懐かしく語るがくこの隣を歩いていたルカには雪うさぎが分からなかった。
彼女に聞いてみるといとも簡単にルカの前で雪うさぎを作ってみせた。
白く円やかな胴体に愛らしい赤い目と瑞々しい緑の耳の雪うさぎ。
心惹かれた様子で見つめるルカにがくこは柔らかく微笑みを浮かべた。
雪うさぎの柔らかな丸みを作るのにルカは苦心していた。
つい力が入りすぎて固く歪んでしまうのだ。それでもルカはがくこの作った雪うさぎを目指して雪を集めては丸めていた。
ふっと息をついたルカはそっと手を開いて仕上がりを見る。上手く出来ていると思う。
がくこを見ると彼女は目元を和ませて頷いた。
「では、仕上げに耳と目を付けて差し上げましょう」
がくこは立ち上がると傍の南天の木から緑も瑞々しい葉と色鮮やかな赤い実を選びとるとルカに差し出した。
嬉しそうに彼女に礼を言ったルカが手を伸ばした時、誰かがぶつかってきた。短い悲鳴を上げてルカが倒れそうになるのを咄嗟にがくこが支えた。
雪玉が続けて飛来するのを見た彼女はルカを背に庇う。彼女の体に雪玉が当たった。
いつの間にか雪合戦がルカたちの近くにまで流れていてルカたちに気付くこと無く雪玉を避けたルキがルカにぶつかってしまったのだ。そして続けてルキを狙って雪玉が二人に飛んできた。がくこはきっと彼を睨みつけた。
「ルキ殿、危ないでしょう!」
諸悪の根源はルキだと言わんばかりに睨み付けて責めるがくこは彼がどれほど謝ろうと頑なな態度を取り続けた。
ルカや雪合戦を中断したカイトたちがとりなしても変わらない彼女に戸惑いが広がる。
「ここにいたのか。皆、お汁粉が出来たぞ。温まるといい」
がくぽの登場にがちゃぽが彼の元に駆けていくと後ろに隠れる。
何かを察した彼は弟の頭を撫でると皆を室内に誘った。
ほっとした様子で移動し始めたカイトたちの後ろからグミたちが心配そうに見ているのを頷いてみせたがくぽにほっとした様子で妹たちは彼らの後を追って行った。
雪遊び 後編