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『想い』に気付かずに死に、『想い』に気付かずに生きていたらこんな不毛な事で心をすり減らす道を選ばなかったのだろうか?
幼い心を知らなければ、傷つけた事に気付かなければ……或いは……。
何時も答えは否。
それでもローレライに力を借り、くり返す度に自問する。
くり返す度に、狂気を含みだした想いはいつの間にか歪に罅が入っていく。
「こわい……んだろうな、俺は」
早く、愛しい人が生きられる場所を。
早く、彼が生きられる世界を。
「ルーク、お前が恋しいよ」
眠るルークの髪を撫で、囁く。指の間をすり抜ける朱金の長い髪がこそばゆく、心地いい。
長い睫に縁取られた瞼の上に、唇を押し付ける。
この世界は何度目だろう。
一度、自覚した想いは過去へ過去へと戻っていってもいつも同じ人を好きになる。年月を数える事を放棄した今でも、そしてこれからも。
「今度こそ、今度こそ」
悲しい幼子に幸せと安らぎを。
その時に、ほんの少しでいいから自分に笑って。そして、側に居させて。
それ以上はもう、望みはしない。
段々と強くなる狂気よ、溢れないで。壊したいとは想わない愛しい人に気付かれないうちに、普遍の幸福を。普遍の未来を。
もう、泣かないように。もう、潰されないように。
今度こそ守ってみせるから。
悲しまないで、苦しまないで。
笑っていて。
「ルーク……」
つづく
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