神威さん家のルカちゃん
目を覚ましたルカが布団の海から懸命に顔を出す。いつもルカが苦戦していると笑いながら手助けをしてくれるはずのがくぽはいない。
不満そうな声を出して彼女はがくぽを探しにベットを降りる。機嫌の悪いルカの鼻先に美味しそうな匂いが届く。
がくぽの居場所が分かったルカがいそいそとキッチンに足を向ける。
コンロに向かい調理をしているがくぽの足に擦り付く。直ぐに彼はルカに目を向けて優しくルカの頭を撫でる。
「目が覚めたか? もう少し待ってろ」
優しい感触に目を細めてうっとりとしていたルカはがくぽの手が離れていくのを未練がましく目で追う。
がくぽはそんな彼女に気付くことなく手際よく食事の支度をしていく。
気付いてくれないがくぽに少し寂しく思いルカは彼の邪魔にならない所から背中を見上げた。
出された食事は美味しかった。がくぽは何時もルカの食べるものに気を使っているから当然といえば当然である。
片付けを始めるがくぽを見送りルカは窓辺に寄る。
暖かな日差しを浴びて空を見上げていたらなんだか外に行きたくなった。
「がくぽ~。お外行きたい」
窓ガラスに手をかけてルカはがくぽを呼んだ。だが彼はなかなか来てはくれない。ルカの目に鈍く光るモノが映り込む。窓の鍵だ。
きょろきょろと辺りを見回してルカは鍵に手を伸ばした。
「こら!! 危ないだろ」
窓を開けようとしているルカに気付いたがくぽは慌てて彼女を抱き上げる。そのまま目を合わせるとルカはツンと澄ましてそっぽを向く。
バツの悪そうなルカに思わず笑みが零れる。
「後から行こうな」
優しく言い聞かせルカを抱いたままがくぽはソファーに腰を降ろす。
そしてルカに優しくブラシを滑らせる。気持よさそうにルカは目を細めている。ブラシからぬれタオルに変えて、がくぽはまたルカを拭いていった。最後に服を着せてリボンを付けて毎朝の日課は終わった。
がくぽはルカをソファーに降ろすと出かける支度を始めた。
診察券、財布、携帯……後は。
がくぽはカゴを手にルカの元に行く。
「ルカ、入って」
「カゴはいや」
ツンとそっぽを向くルカを捕まえようとしたがくぽの手をよじ登り、ルカは無理矢理にがくぽの懐に入り込む。
苦労して体勢を立て直したルカは顔を出した。
満足そうな顔をしているルカを無理にカゴに入れるのをがくぽは諦めるしかなかった。
ここで機嫌を損ねては大変だし、何時もこうなのだから仕方がない。
戸締りを確認してがくぽはルカを動物病院に連れていった。
後書き
本当にごめんなさい。でも書いてる方は楽しかったです。
このルカちゃんは正しくお姫様です。がくぽに甘やかされて育っていますから。
別のパターンで『巡音さん家のがくぽくん』とか考えました。
この場合、がくぽは犬ですね。忠犬です。ルカ命の。
反響があったらまた書くかもしれませんが本当にごめんなさい。