アッシュが建てた小さな家に暮らし始めてそろそろ半年ほどになる。ここでの生活にも慣れてきたルークは鼻歌交じりにスープを掻き混ぜていた。
ここでの生活はほぼ自給自足になる。
アッシュの知り合いに米や穀物といった育てにくいものは定期的に持ってきてもらっているが、育てられるものや魔物から取れるものはそこから確保している。
このスープもアッシュに習い鶏がらからじっくりと取ったものだ。
最初は簡易の調理場しかなかったが、アッシュが石窯等を用意してくれたお陰で今ではパンも焼く事が出来るようになった(焼けるのはアッシュなのだが)
見た目はボロボロでも、ベットも二人用の家具もある。
ここはルークの家なのだと確認出来て、アッシュと暮らせる今はとても幸せだった。
今はアッシュは仕事の報告のためにケセドニアまで出かけていた。
そろそろ帰ってくるはずだと、ルークは朝から頑張って食事の支度を進めている。
(なんか、お嫁さんみたい)
ルークは直接彼に伝えた訳ではないが、アッシュに対し特別な感情を持っていた。それは何時からかはわからないが、自分を護り大切に扱ってくれるアッシュに想いを自覚するのは簡単だった。
共に暮らしているのだ、着替えやほんの些細な時にアッシュの鍛えられた身体を目にし思わず意識してしまう事もある。
畑仕事も余り自分にはやらせず、アッシュがほとんど行ってしまう事は、いささか不満だが……。
今日の食事の時に切り出すつもりだ、手伝うと。
ギィと音をたてて立て付けの悪い扉が開けれる。
「ただいま。ルーク」
扉から顔を覗かせたアッシュが、台所のルークを認めると優しく微笑んだ。
「おかえりなさい! アッシュ」
ここでの生活で大分伸びたアッシュの身長では通りにくそうな入り口をくぐり、アッシュはルークの側までやってくる。
「美味そうだな」
「本当!? 待ってろよ、もう直ぐ出来るから」
ケセドニアから急いで戻ってきたからか、空腹を訴えるアッシュに微笑みかけ、ルークは仕上げのパセリをスープに散らす。
それらをさらに盛り付けているとアッシュは昨日焼いたパンを切り分け始め、均等に皿に分け始めた。
食後の後片付けを終え、一息つくとベットに腰掛けたルークの横にアッシュが腰をおろす。小さな家に入れられたのはこのベットだけで普段は一緒に使っている。でも、改めて顔を見合わせると何だか気恥ずかしい。
その時、左手をアッシュに掴まれ、顔を上げた。
アッシュは左手の薬指に銀製の指輪を通しその上からキスをしてきたのだが……。
「ふえ!!? アッシュ!?」
変な声が出た。
その変な声にアッシュは眉間に皺を寄せ。(でも耳が赤いから照れてるだけだ)
「改めて、言うのは何だと思ったんだが……」
「うん、なに?」
気恥ずかしくて目が合わせられないルークを抱きしめる。
「すきだ、だから……俺の側にいてくれ」
迷うことなく、伝える。
真っ赤な顔をしたルークはそれでも、頷いてくれた。
次の日から二人の左の薬指におそろいの指輪が嵌ったのは言うまでも無い。
end