誰かが家の前で話ているのに気付いて、慌てて物陰に隠れた。見つかりたくない、怖い……。
この家はチーグル族のみんながくれた森の一角に、アッシュが知り合いとやらに協力してもらいながら作った家だ。
本当は、建築の所まで手伝うと言ってくれたのだそうだが、アッシュはそれを固辞し自力で建てたのだ。恐らくは、ルークを気遣って。
今でもこの森の中で仕事を持ってきて貰っている様で、最初はその人たちが来たのかと思った。
アッシュの恩人に、失礼な態度を取り続けたくなく、一度だけでも会ってみたいと無理難題に近いお願いをアッシュにしていたからだ。
地震が来ればつぶれてしまいそうなこの家は、アッシュがルークと暮らす為に用意してくれたルークの宝物。その家の中なら、アッシュに手を握ってもらえれば普通に話せる気がしてた。
しかし、今。
家の前にいるのは、どう考えてもその人たちでも、ましてや愛しい彼でもない。見知らぬ人達がこの隠れ家を見つけてしまったのだ。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ!!!!
全身から血の気がざぁ!! と音をたてて引いていく。喉かからからに渇き、目が干からびていく様だ。ガタガタと全身に異様な震えが走り、嫌なべっとりとした汗をかく。
呼吸が速く細いものに変化し、いくら吸っても息苦しい。
アッシュアッシュあっしゅあっしゅっ!!
早く帰ってきて! はやく!
入ってきてしまう、断罪者達が!!
長閑なノックの音が家の中に響く。怖がった罰と彼を独り占めした罰も含まれるのかな?
ああ、来る……。
何度目かで痺れを切らした断罪者の一人が中に入ってくる。
続いて三人、でももう、怖くて怖くて身動きなんて取れなくて。気配も消せなくて。
「ルーク!!!??」
金色の人が嬉しそうな声で呼んできた気がしたけど、それよりも早く意識を手放してしまっていた。
もし、ここで気絶しなかったらきっともう、くるうしかなかった。