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TOA・ボーカロイド中心の二次創作です
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塩の◎のパロディです。
死にネタでクロスオーバー

キャスト 大家=ユーリ
      居候女子=エステル
      リュックの人=アッシュ

+ + + + + + + + + +

ユーリは知人の家から借りてきたまだ動く乗用車をアパートの前に横付けする(エンジンを切るとかなり機動に時間が掛かる) 
塩が世界を蝕み始めた昨今で盗まれもせずにまだ動く車があったのは僥倖だった。
 
(ユーリちゃん。倅も塩害で死んでしまったし……良ければ貰って)

昔から顔なじみの老女は泣きながら車庫にあった車をさしていた。彼の葬式には自分も出た。幼馴染だった。

「エステル!! 出て来い! 」

アパートの二階部分に声をかけるとチュニックに短パン、サンダルといった出で立ちのピンクの髪の彼女が出てくる。夏日にその格好はいかにも涼しげだ。対象的にユーリは黒の上下に身を包んでいる。

彼女の後ろから、白いシャツと黒いズボンを履いた深紅の髪の青年が出てくる。その背中には大きなキャンプリュックが背負われている。

「とりあえず、海まで行ければいんだな? アッシュ」
「ええ、そうしていただけるとありがたいです」
「大丈夫ですよ、ねぇ? ユーリ」
「エステル……道がどうなってんのかわかんねぇし。安請け合いするんな」

彼女を嗜めつつ、二人が降りてくるのを待つ。アッシュの肩に食い込むリュックを視線から外しながら。

塩害。

その脅威は突然世界を襲い。今尚世界を恐慌の渦に沈めている。

海に突然落ちた巨大な塩。そこから肥大していった……人間や物を塩に変える奇怪かつ恐ろしい塩害。回避の術が誰も知らずにただ無為に過ごし、何時しか塩に変わり果て死に至る。
エステルもまた、塩害で親族を失い、ユーリに保護された。
男達に強姦されかけていた彼女を助けれたのは奇跡に近い。その日から、エステルはユーリのアパートに身を寄せている。ユーリは、塩害に太刀打ち出来ずに軍を辞めた人間だった。
今はまともな職も無く、貯金と配給で暮らしている。

この辺りにはまだ経営している食料品店もあるため、差し迫った恐怖は薄い。エステルもユーリと暮らしている今は、暴漢の危険にもあっていない(ユーリが元軍人である事が要因らしい)

そんな彼女が、時おり外出から帰るときに何かを拾ってくる。

犬だったり猫だったり鳥だったり。

今日は人間を拾ってきた。

大きな荷物に、疲弊しきった様子で海に行きたいと願い、その足だけで海をめざし歩き続けていたアッシュを見るに見かねて車を出す事を提案したのはユーリだった。

車に乗り込み、アッシュが大きな荷物を殊更大切そうに座席に下ろし、シートベルトを付ける。エステルもシートベルトを締めた事を確認して、ユーリはハンドルをきった。


海に続く道を地図でエステルに案内されながら、塩と崩れかけた建物と言う代わり映えのない道を進んでいく。

時おり車が止まりそうになるのをうまく治めながら……。

それから何時間立ったかは定かではないが(車の時計は壊れていた)
辿り付いた海は巨大な塩のオブジェがささった芸術の様に見える。夕陽に染まる姿は眼を奪う。
塩害の後、益益塩気を帯びた海風にあたりながらアッシュは荷物を大切に抱え浜を進んでいく。その後を続こうとするエステルの腕を掴み、押しとどめる。

「ユーリ? 」

不思議そうに、顔を覗きこんでくるエステルに首を左右に振る事で、近づく事を禁止する。

「ここで、いいんだな? アッシュ」

海の水に足を浸すまで歩みを進めた彼に、声をかける。その問いかけに振り返ったアッシュは頷く事で肯定する。
海の中は少し冷たい感触を足に伝えてくる。リュックを下ろし、口を開くと後ろでエステルが息を呑む音が聞こえた。ユーリは有る程度、理解していたのか驚きはしたがそれ以上の反応はない。

リュックの中には、塩に成り果てた人間。アッシュと同じ顔の……しかし、どこかあどけない少年が……塩害によって死んだ亡骸が納められていた。

「弟なんだ。双子の、仲が悪くてな……いつも喧嘩していた。俺は、こいつが煩わしくて一人で暮らしてたんだ。あの日まで……」

掌で塩の像を崩し、キスをして海に投げる。その動作を淡々と繰り返しながら……言葉を続ける。

「あの日……突然こいつが部屋に来て……泣いてた」

身体が塩に変わりだしたと死んでしまうと泣く、弟。

「恋人だっていたんだぜ? 俺もこいつも」

それでも最後に選んだのは兄だった弟。涙を流し、抉れた塩になった涙の痕を見て、溜まらず抱きしめた。塩の香りと、弟の香り。

「ルークは、俺が好きだと言って来た。……もっと早く気付けたらよかったんだ。俺達は」

愛する人の傍らで死を選び、死んだルーク。その間際に気付いた想いは、確かに重なり……。愛しているとただ抱きしめあいながら伝えあった。
ルークが完全に塩に成り果てるまで。

「海に流して欲しいと、ルークに頼まれたんだ。だから、ここまで来た」

乗せてくれてありがとう、助かったよ。とアッシュは微笑み、最後の一掴みまでキスをし、海に投げ入れた。振り返り、微笑みアッシュの頬を涙が伝う。

「あ、あの……」
「行くぞ、エステル」

腕をつかまれたまま、エステルが車に押し込められるのを眺め、ユーリが最後に手を振り乗り込んで行った。
緩く走り出した車を見送り終わると、アッシュは掌に視線を落す。

ルークの塩ではない塩に覆われた掌を……大切に握りしめながら……。

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