親がたまたま買ってきた蜂蜜の中にあった『桜の蜂蜜』。
唯の頭はもうすでに手遅れなほどにがくルカにやられていたためにそれを見たとき
桜=ルカといってしまいましたwww
だからといって、がくぽがルカに蜂蜜をかけていただくわけではありません!!
桜の蜂蜜を見つけたミクとリリィがただ蜂蜜を食べてるだけの話です(がくルカ分はあります)。
よろしければ追記よりどうぞ
唯の頭はもうすでに手遅れなほどにがくルカにやられていたためにそれを見たとき
桜=ルカといってしまいましたwww
だからといって、がくぽがルカに蜂蜜をかけていただくわけではありません!!
桜の蜂蜜を見つけたミクとリリィがただ蜂蜜を食べてるだけの話です(がくルカ分はあります)。
よろしければ追記よりどうぞ
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切なる想い
午前中の日差しが嘘のように陰り遠くでゴロゴロと雷が鳴り出した空。
道を歩いていたミクは不穏な空をむっと見上げた。
傘を持ってくるのを忘れて家を出てきたのに気付いたのはスタジオを出て暗くなった空を見た時だった。その時はまだ大丈夫そうに見えたミクは傘を貸してくれようとするスタッフの言葉を断りスタジオを後にした。
あの時おとなしく傘を借りてくれば良かった。
はあっと息を吐いたミクは諦めたように足早に歩き出した。
ピカっと閃光。一瞬おいて轟音が鳴り響く。
とっさに耳を塞いだミクは次の瞬間、嫌そうに顔を顰めた。
バケツをひっくり返したような雨が降り出したのだ。
持っていた鞄を雨避けにしたミクは目に付いた一軒の店に駆け込んだ。
一時の激しさは鳴りを潜めて降る雨にピンクの傘を差したミクが紙袋を手に家の前に立つと、遠くで自分を呼ぶ声に気付いた。
キョロキョロと見回すと通りの向こうから黒い傘を差したリリィが手を振っていた。
「ミーク!」
「……リリィ。どうしたの?」
喜色満面で走ってきたリリィは軽く息を乱していた。息が整うのを待って問いかけるミクに彼女はお邪魔していいかと聞いてきた。
断る理由も無かったミクは頷くとリリィと一緒に家の中に入っていった。
「はー……助かった」
「別に構わないけど。……鍵無いの?」
「……ううん。鍵は持ってる」
ぼふっとソファーに倒れこむリリィの姿は心底疲れ切っていた。
雨のせいか肌寒く感じたミクは茶を淹れようと荷物を置くとキッチンに向かった。
湯を沸かしながら気になった事を訊いてみると彼女は眉を寄せて不機嫌そうに答える。
鍵を持っているのに家に入れないこれ如何に。首を傾げるミクはティーポットに湯を注ぎ温めると茶葉を用意した。
「家にルカさんが来ているの。……昼間っから何考えてるんだか、あの兄は……」
ふふふとどんよりとした暗雲を背にリリィが笑うのを見て理解した。
そういえば、今日ルカはオフで互いにオススメのDVDをがくぽと一緒に彼の家で見ると言っていたのを思い出した。恋人同士が二人っきりで何をしていようが自由だが、家に帰ってそれでは逃げ出したくなるリリィの気持ちもよく分かる。
何とも言えない表情でリリィを見ると彼女もまた何とも言えない表情を向けてくる。
目だけでねぎらい合うとミクはポットを温めていた湯を流して茶葉を放りこみ湯を注いだ。
「ところでミク。これって何が入っているの?」
彼女の手にある紙袋を見たミクは開けてもいいよと告げると茶菓子を探し始めた。
カサコソと紙が擦れる音。
「蜂蜜? ……あ、桜のなんてあるんだ」
「そ、雨宿りに飛び込んだお店が蜂蜜の専門店で試食したら美味しかったから買ってきたんだ」
小ぶりな瓶の中に薄い金色のとろりとした液体。ラベルに『桜』と書かれたその液体は桜の蜂蜜だった。
瓶の蓋を開けたリリィは蜂蜜の香りを確かめるように顔を寄せた。
特に香りはしないその瓶の中に指の先をちょんと入れて中の蜂蜜をすくうと口に含む。
二人分の茶をトレイに乗せてリビングに来たミクはその行動に声を上げた。
「リリィ!」
微かに肩を竦めてみせたリリィは蜂蜜を味わう。
しつこい甘さではなくさらりとした深みのある甘さが口の中に広がる。ふわりと口に桜の香りと味が広がるのを目を細めてうっとりと余韻まで味わったリリィは瞳に切ない色を浮かべた。
「さくら……」
脳裏に浮かんだ桜にある人の面影を重ねた。
品があり、優雅で、儚く、美しく強く、憧れて……焦がれても届かない。
「ミク。これ買った時、意識したでしょ?」
「……うん」
呼びかけるとミクもまた切ない色を浮かべた瞳で小さく頷き二人分の茶をテーブルに置きトレイを抱える。
ミクもリリィも同じ人を好きな事は二人の距離を縮めて仲良くなる切っ掛けだった。
ミクの誰にも言えない恋心を分かってくれるリリィの存在は重苦しいミクの心を軽くし、彼女と過ごす時間は楽しいもので親友といっても良い程だ。
「あー……切ないね~」
呟くリリィはまた指先を瓶の中に。
注意しようと口を開きかけたミクはキッチンに向かいトレイを置くと食器棚の引き出しからスプーンを二本持って来た。
一本をリリィに渡すとミクもスプーンの先を瓶の中に入れた。
「しょうがないよ。……相手が悪すぎるもん」
苦く笑い蜂蜜を乗せたスプーンを口に運ぶと香る桜に目を細める。
近くて遠い存在。
「……まあね。わたしが狙ってるの知っててもふつーにルカさんと一緒にさせるもんねー。あの兄は」
むしろ頼んでくる時もあるくらいだ。余裕というものだろうか。
いや、兄は自分を信用しているのだ。大切な恋人を任せられるほどに。
だから、リリィは裏切れない。……たまには裏切るが。
「ミクも言っちゃえばいいのに」
「言ったら……ルカが気にするだけだもん」
言えば言った自分はスッキリするだろう。元々報われないと知っているから。だが、ルカはきっとミクの想いを気にして、苦しむのが目に見えてわかる。
そうしたらもうこの今の関係は消えて無くなるし、何よりミクが好きなあのルカの笑顔が見えなくなるのは嫌なのだ。
またひとさじ、蜂蜜を取り口に運ぶ。
「確かにねー。あんな笑顔を見せられたらねー」
ミクの言葉に目を細めてリリィはルカの笑顔と兄の表情を思い浮かべる。
誰に向けるよりも綺麗で、柔らかく優しいルカの笑顔とそれを見守るがくぽの穏やかな表情と温かい光を宿す瞳。
くすぐったくも愛おしい二人の姿。
瓶から蜂蜜をすくう。この蜂蜜のように甘く心に染みて思わず笑みを浮かべたくなるような幸せな気持ちをもたらしてくれる。ほんの少しの切ない痛みを伴って……。
「……相手が兄じゃなかったらなー」
「……あそこまで大事にされたらね」
もし、ルカが付き合っている相手ががくぽで無かったら、もし、ルカに酷い事をするような人だったら、……躊躇いなく奪い取る。
だけど、がくぽは、どこまでもルカを大切に……大事にしていて、惜しみない愛情を注いでいで、愛してくれる人だからルカはがくぽの傍でとても美しく幸せそうな表情して、ただ、ひたむきにがくぽを愛しているから……。
だから、何も言えないし動けない。
温かく穏やかな瞳でくすぐったそうにリリィは微笑むとスプーンを口に運ぶと切なく瞳が揺れる。
何も言わずにミクは薄く笑みを浮かべると切なさに揺れる瞳を伏せて瓶にスプーンを差し入れる。
「でも、この蜂蜜美味しいなー。どこの店?」
「なら、今度一緒に行こう」
額を寄せ合いくすくすと笑いながらリリィとミクは間に置かれた小ぶりな瓶から交互に蜂蜜をすくい口に運ぶ。
「いいの?」
「お店の人に傘借りたから、返さないといけないし……これじゃあ無くなっちゃうし」
首を傾げるリリィに苦笑したミクは瓶を持ち上げた。
八分目まで入っていたはずの蜂蜜が底から数センチしか残っていない。
ぱちぱちと瞬いていたリリィがぷっと吹き出して笑い出した。
「……ごめん、ミク。つい美味しかったから……」
「いいよ。わたしも食べたし。……何時なら時間合うかな?」
笑うリリィに笑い返してミクは蜂蜜をスプーンにすくい口に運ぶと鞄から手帳を取り出し問いかけた。
眉を寄せて手帳を睨むリリィの手に握られたスプーンが瓶に向かう。
ああでもない、こうでもないと予定を突き合わせるミクとリリィの姿をいつの間にか雨が上がり差し込んできた夕日が照らしていた。
おまけ
各関係者の証言(プライバシー保護の為、音声は変えてあります)
Gさんの証言
『初めは確かにDVD鑑賞をしておった。ただ、空模様が怪しかった為に洗濯物を取り込むために一度、恋人を居間に残し離れたのだ。……取り込み終わった頃には一面暗くなり雷鳴を聞こえていたな。居間に戻ってみると心細そうにしておったから傍によると安堵したように腕を掴んできたのだ。その時、ひときわ大きな雷が鳴り響いたと思ったら、縋り付いて震えておったからなだめていただけだ。』
Rさんの証言
『その日は予定より早くに仕事が終わったの。家に兄の恋人が来ていることは知っていました。もしかしたら夕食を食べていくかもしれないと思ったので、わたしが当番だっったから腕によりをかけて振舞おうと思い家に帰りましたら、あれでした』
by 瀬川 唯
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